1 国外調査 1.5.3
1.5 ギリシャにおける合理的配慮・環境整備と国連障害者権利委員会審査状況
1.5.3 ギリシャにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ
ギリシャは、障害者の権利に関する国内法を新たに整備し、障害の定義に社会モデルを組み入れるなど、法整備には一定の進展があることを政府報告及び政府回答で主張している。この点について、国連障害者権利委員会は総括所見において肯定的側面として留意している。一方で、委員会は明確な期限、効果測定、予算の割当てを伴った、条約実施のための包括的な国家戦略や行動計画の策定を勧告している。また、パラレルレポートでは医学的アプローチによる障害の認定が依然として行われているという指摘がなされているが、国連障害者権利委員会も、総括所見において、あらゆる法律、規則、慣行における障害の人権モデルの導入と、障害の評価の仕組みを含む、障害に関する法的、あるいは行政上の枠組みを条約に適合させるよう勧告している。
個別分野に関する議論では、合理的配慮の否定を含む差別禁止原則の規定が雇用・労働分野に限られていること(第5条)、障害のある女性に対する複合・交差差別への措置の未整備(第6条)、後見に類似した法的扶助制度の維持(第12条)、そして司法手続のアクセシビリティの未整備(第13条)の4点に関して、パラレルレポートと総括所見での一致がみられた。また、第19条に関して、国連障害者権利委員会は事前質問事項の中で、パーソナルアシスタントを含む支援サービスの利用可能性について情報提供を求めたものの、ギリシャによる政府回答にはこの点に関する明確な回答が含まれていなかった。委員会は総括所見の中で、パーソナルアシスタントを含む地域社会支援サービス等の情報が不足している点に懸念を示している。第24条に関しては、パラレルレポートでインクルーシブ教育の導入が不十分な点に関する指摘がなされ、委員会も事前質問事項において、インクルーシブ教育を受ける権利を確保するための措置等について情報提供を求めた。これに対し、ギリシャは政府回答で様々な取組を紹介した。一方、委員会は総括所見において、普通学校及び高等教育におけるインクルーシブ教育確保のために十分な経済的、物質的資源の割当てや、インクルーシブ教育に関する一貫した戦略の策定を勧告した。
ギリシャの審査では、市民社会からのパラレルレポート提出が少なく、国内の障害者団体では統括組織からのもののみであった。国連障害者権利委員会は、障害に関する政府の決定過程や障害者権利条約実施の監視への障害者、障害者団体の参加の確保を求めており、総括所見の中で繰り返し言及している。また、ギリシャは近年、難民への対応が社会的課題となっているが、総括所見でも各所で難民や亡命申請者への対応を求めている。