1 国外調査 1.6.3

 インドでは、2016年に、合理的配慮に関する規定を盛り込んだ障害者権利法を制定している。また、2017年にメンタルヘルスケア法が制定されており、これらの立法に関して、NHRIはパラレルレポート62の中で評価している。これらの立法行為に対して、国連障害者権利委員会は総括所見の中で肯定的側面として歓迎している。特に、障害者権利法については、今回の調査対象となった条項だけでも第13条を除くすべてで話題に挙げられており、この法律がインドの障害者政策で中心的な役割を担っていることが推察される。

 その一方で、パラレルレポートでは農村、山岳、部族民居住地等で、障害者の権利や平等が適切に守られていない点、障害のある女性や女児に対する虐待や搾取といった形で、国内で複合・交差差別が存在していることが報告された。国連障害者権利委員会は、第5条に関する事前質問事項において、指定カーストや指定部族のハンセン病患者やLGBTの障害者等への複合・交差差別を根絶するための取組の進捗について情報提供を求めている。これに対し、インドは政府回答において、障害者権利法はカースト、信条、宗教、ジェンダー等に関係なく適用可能であると回答した。委員会は、第5条に関する総括所見では、法律における、直接的、間接的な障害に基づく差別及び複合・交差差別の認識の確保と、差別禁止における例外規定を定める障害者権利法の第3章(3)を廃止することを勧告した。

 さらに、第12条に関する総括所見において、委員会は、障害者権利法とメンタルヘルスケア法、及びその他既存の障害者法制等から後見に関する規定を削除することを勧告している。
 以上からは、障害者権利法やメンタルヘルスケア法の制定自体は歓迎するべきものである一方で、内容は条約と完全には一致していないと委員会が認識していることがうかがえる。また、ハンセン病や指定カースト等、インド固有の社会的状況及び地域格差を踏まえた措置の必要性が繰り返し指摘されており、複合・交差差別への配慮がより厳しく求められていると考えられる。


62 NHRIによる事前質問事項のためのパラレルレポート p. 2.

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