1 国外調査 1.9.3

1.9 ラオスにおける合理的配慮・環境整備と国連障害者権利委員会審査状況

1.9.3 ラオスにおける合理的配慮・環境整備等の実態状況のまとめ

 ラオスは、障害者の権利に関する法律、障害者に関する首相令を規定している。この首相令における障害の定義は「障害の理由にかかわらず、身体的、心理的、精神的、知的な機能障害もしくは視覚、聴覚、発話に及ぶ器官やその一部の機能が失われており、日常生活や社会活動への完全参加の障壁となっている者」となっている。これに対し、国連障害者権利委員会は事前質問事項で、障害者権利条約における概念及び用語と法令や政策の整合性をとるための取組、そして法令や政策を、医学モデルや慈善モデルから、人権モデルに基づいたものにするための措置について情報提供を求めた。

 政府報告によれば、ラオス政府は市民社会組織と協力しながら様々な取組を進めており、とりわけ人材育成やアクセシビリティ向上に力を入れている。人材育成については、ラオス女性障害者開発センターによる、障害のある女性への職業訓練、並びに、司法や教育の場で働く者への研修やセミナーを通した障害者への配慮の理解の向上等がなされている。施設やサービスのアクセシビリティについては、建築法における障害者への配慮規定やバリアフリー環境整備の取組が始まっているとされている。

 人材育成に関して、国連障害者権利委員会は、第6条に関する事前質問事項として、ラオス女性障害者開発センターの予算に関する情報を、第13条に関する事前質問事項として、具体的な研修やセミナーの内容や、用いられた法的枠組みに関する情報提供を求めた。また、第24条に関しては、都市と農村における、インクルーシブ教育のための教員の研修に関する情報提供を求めている。アクセシビリティに関して、委員会は、第9条に関する事前質問事項において、建築法と、障害者に関する首相令の実施状況についての情報提供を求めた。

 実施体制に関しては、障害者権利条約が定める中央連絡先、調整のための仕組み、独立した仕組みについて、政府報告の中で具体的な言及はなされなかった。一方、パリ原則に規定されている国内人権機関の設置は検討段階にあるとされている。国連障害者権利委員会は事前質問事項において、第33条に定められた義務を果たすために講じられた措置について、ラオス政府に報告を求めた。 このように、ラオスでは関連法制度の制定や政府と市民社会組織が提携した取組を進めている一方で、障害者差別における合理的配慮の義務付けや差別に関する苦情受付機関の整備が主な課題であると考えられる。

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