2 国内調査 2.4.1

2.4 取組状況詳細調査結果

2.4.1 対象地方公共団体の選定

 詳細調査では、悉皆調査の回答内容等から注目すべき取組を進めていることがうかがわれる10の地方公共団体(ヒアリング調査対象5団体、資料調査対象5団体)を選定し、次の5項目について取組の詳細を調査した。

  1. 差別の定義・概念について
  2. 障害の定義・概念について
  3. 事業者への合理的配慮の提供の義務付けについて
  4. 相談対応等の仕組みと地域協議会の役割について
  5. 啓発・研修活動について

 各対象地方公共団体は、障害者差別解消法の施行後に障害を理由とする差別の解消を目的とする条例を制定し施行している地方公共団体の中から、条例の規定の内容等を基に選定を行った。
 ヒアリング調査の対象地方公共団体は、上記5つの調査項目と関係する条例上の規定を整理し、主に特色ある取組やその効果等を調査するという視点から選定した。
 また、資料調査の対象地方公共団体は、同様に上記5つの調査項目と関係する条例上の規定を整理し、主に運用実績、啓発用パンフレット、条例の条文及び逐条解説、ガイドライン等の有無とその内容等から選定を行った。
 選定した対象地方公共団体は、次のとおりである。

  • ヒアリング調査 5団体 (現地を訪問し、担当者へのヒアリングを実施した。)
    秋田県、静岡県、滋賀県、立川市、茨木市
  • 資料調査 5団体 (調査項目に関する問い合わせを行い、書面で回答を得た。)
    香川県、大分県、新潟市、所沢市、北九州市

 表2.4-1に、ヒアリング調査の対象とした地方公共団体の条例における関連規定を示す。調査項目と関連する条例の規定のポイントは次のとおりである。

[1] 差別の定義・概念について

  • 条例において、障害を理由とする差別の定義について、例えば「障害に関連する事由を理由として」等の文言を明記して、障害に関連する事由を理由とした差別等が含まれることを明確にしている。(静岡県、滋賀県、茨木市)

[2] 障害の定義・概念について

  • 条例において、障害者の定義の中で、「難病」の文言を明記し、難病が障害に含まれていることを明確にしている。(静岡県、滋賀県、茨木市)
  • 条例において、障害の定義について「心身の機能と社会的障壁との相互作用により」という規定を設け、心身の機能だけでなく社会的障壁との相互作用による要因で社会生活に制約があることとしている。(立川市)
  • 条例において、「障害の社会モデル」の定義を置いている。(滋賀県)

[3] 事業者への合理的配慮の提供の義務付けについて

  • 条例において、事業者に対し合理的配慮の提供を義務付けている。(秋田県、滋賀県、茨木市)
  • 事業者の合理的配慮の提供は努力義務であるが、努力義務の内容を分野ごとに定めている。(立川市)

[4] 相談対応等の仕組みと地域協議会の役割について

  • 条例上、個別相談において当事者間の合意ができず解決できなかった場合には、合議体による事実の調査と助言を含むあっせん等の対応によって解決を図ることとしており、地域協議会や条例に規定された合議体があっせん等を担当している。(秋田県、静岡県、滋賀県、茨木市)
  • 条例上、個別相談において当事者間の合意ができずあっせんの申立てがあった場合には、市長が合議体に対しあっせんの適否について諮問し、合議体の答申に基づいてあっせんを行うとしている。(立川市)
  • 個別相談の対応については、障害者団体等に委託することができると規定している。(秋田県)
  • 地方公共団体が委託する相談機関(委託相談機関等)について、差別に関する相談を受けたときはすみやかに相談内容を当該地方公共団体に報告するものとしている。(立川市)
表2.4-1 ヒアリング調査の対象とした各地方公共団体の条例における関連規定(抜粋)
[1] 差別の定義・概念 [2] 障害の定義・概念 [3] 事業者への合理的配慮の提供の義務付け [4] 相談対応等の仕組みと地域協議会の役割
秋田県 (なし) (定義)第2条
1 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止)
第8条 何人も、障害を理由とする不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

(社会的障壁の除去のための合理的な配慮)
第9条 行政機関等及び事業者は、秋田県の区域内においてその事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
(相談への対応)
第10条 何人も、知事に対し、障害を理由とする差別に関する相談を行うことができる。
2 知事は、前項の相談を受けたときは、その内容に応じて、次に掲げる対応をするものとする。
一 相談者に対し、助言又は情報提供を行うこと。
二 当該相談に係る当事者間の調整を行うこと。
三 関係行政機関に通報その他の通知を行うこと。

(相談業務の委託)
第11条 知事は、前条第2項各号に掲げる対応に係る業務の全部又は一部を障害者団体等に委託することができる。

(あっせん)
第14条 知事は、前条第一項の調査の結果に基づき必要があると認めるときは、委員会(第17条に規定する委員会をいう。)に対し、当該調査の結果を通知するとともに、あっせんの手続を開始するよう求めるものとする。
2 委員会は、あっせんのために必要があると認めるときは、対象事案の関係者の出席を求めて説明を求め、若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。

(委員会の設置及び所掌事務) 第17条
第14条の規定によるあっせん及び第15条第1項の規定による勧告の求めに係る事務を行わせるため、秋田県障害者差別解消調整委員会を置く。
静岡県 (定義)第2条
(4)不当な差別的取扱い 障害者に対して、正当な理由がなく、障害を理由として、財、サービス、機会の提供等を拒否し、又は当該提供等に当たって場所、時間等を制限し、若しくは条件を付けること等により、障害者の権利利益を侵害することをいう。
(定義)第2条
(1)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(事業者における障害を理由とする差別の禁止)第9条
2 事業者は、福祉、医療、雇用、商業、交通、教育その他の障害者の日常生活又は社会生活に関する分野において、その事業を行うに当たり、合理的な配慮をするよう努めなければならない。

(定義)第2条
(5)合理的な配慮 障害者の求め(当該障害者が障害によりその意思の表明を行うことができない場合又はその意思の表明を行うことが著しく困難な場合にあっては、当該障害者の意思の表明を代わりに行う者の求め)に応じて、障害者が障害者でない者と同等の権利を行使するために、又は障害者でない者と同等の機会及び待遇を確保するために必要かつ適切な措置を行うことをいう。ただし、社会通念上相当と認められる程度を超えた過重な負担を伴うものを除く。
(助言又はあっせん)
第15条 知事は、第13条第1項の申立てがあった場合において、当該対象事案の解決を図るために必要があると認めるときは、協議会に対し、当該対象事案の当事者に対する助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。
2 協議会は、前項の規定により助言又はあっせんを行うよう求められたときは、当該対象事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うものとする。
3 協議会は、前項の助言又はあっせんのために必要があると認めるときは、当該対象事案の関係者に説明又は資料の提出を求めることができる。
滋賀県 (定義)第2条
(3)障害を理由とする差別 正当な理由なく障害または障害に関連する事由を理由として障害者に対して行う次に掲げる行為または合理的配慮を行わないことをいう。
ア 教育を行う場合において、次に掲げる取扱いをすること。
(ア)その年齢および特性を踏まえた教育を受けることができるようにするための適切な指導および支援を行わないこと。
(イ)障害者およびその保護者への意見聴取および必要な説明を行わず、またはこれらの者の意見を十分に尊重せずに、当該障害者を就学させるべき学校および特別支援学校を決定すること。

※アからサまで、分野別(教育、労働者の募集・採用、商品またはサービス、福祉サービス、医療、建物その他の施設または公共交通機関の利用、不動産の取引、地域における活動の場、情報の提供、意思の表明、その他)において、障害者に対して行う行為または合理的配慮を行わないことを列挙している。
(定義)第2条
(1)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害および社会的障壁により継続的または断続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(定義)第2条
(5)障害の社会モデル 障害がある者が日常生活または社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相対することによって生ずるものとする考え方をいう。
(県民および事業者の責務)
第5条 県民および事業者は、基本理念にのっとり、障害等に関する理解を深めるとともに、県が実施する障害を理由とする差別の解消の推進等に関する施策に協力しなければならない。

第6条 何人も、障害を理由とする差別をしてはならない。
(あっせん)
第12条 知事は、前条第1項または第2項の規定によるあっせんの申立てがあったときは、滋賀県障害者差別のない共生社会づくり委員会にあっせんを求めるものとする。
3 滋賀県障害者差別のない共生社会づくり委員会は、あっせんのために必要があると認めるときは、対象事案の当事者その他の関係者に説明を求め、もしくはその意見を聴き、または必要な資料の提出を求めることその他の必要な調査を行うことができる。
立川市 (用語の定義) 第2条
(2)差別 障害を理由として、不利益な取扱いをすること及び合理的配慮を怠ることにより、障害のある人の権利利益を侵害すること。
(4)合理的配慮 障害のある人が他の人との平等を基礎として、全ての人権及び基本的自由を享受し、又は行使することを確保するためのもので、社会的障壁を取り除くために、その性別、年齢及び障害の状態に応じて配慮を行うこと。ただし、均衡を失するもの又は過度の負担を課すものは、除く。
(用語の定義)第2条
(1)障害 心身の機能と社会的障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に制約があること。
(保健及び医療に関する合理的配慮等)
第7条 市は、障害のある人及びその家族が必要な医療、健康診査等を受けられるよう、保健、医療及び福祉に関係する事業者と連携し、必要な支援を行うものとする。
2 市は、障害のある人の保健事業を円滑に実施するため、必要な措置を講ずるものとする。
3 保健及び医療に関係する事業者は、従事者に対して、障害に対する理解を深めるため、必要な研修を実施するよう努めるものとする。

※第7条から第17条まで、分野別(保健及び医療、福祉サービス、教育、保育、療育、雇用、公共的施設の利用、文化芸術活動・スポーツ及び生涯学習、情報保障等、住居、防災)に合理的配慮等の考え方や取り組むこと(事業者は努力義務)を列挙している。
(相談、助言等)
第19条 障害のある人及びその関係者は、市又は市が委託する相談機関等(以下「委託相談機関等」という。)に対し、差別に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。
2 委託相談機関等は、特定相談を受けたときは、速やかに相談内容を市に報告するものとする。
3 市は、特定相談又は前項の規定による報告を受けたときは、必要に応じて次の各号に掲げる事項を行うものとする。
(1)特定相談に係る関係者への事実の確認及び調査を行うこと。
(2)特定相談に係る関係者に必要な助言及び情報提供を行うこと。
(3)特定相談に係る関係者間の調整を行うこと。
(4)関係行政機関への紹介を行うこと。

(あっせん)
第21条 市長は、前条第1項又は第2項に規定する申立てがあったときは、第23条第1項に規定する立川市障害を理由とする差別解消推進まちづくり協議会(以下この条において「協議会」という。)に対し、あっせんを行うことの適否について諮問するものとする。
2 協議会は、前項に規定するあっせんを行うことの適否を判断するため、必要があると認めるときは、当該事案に係る関係者に出席を求めて意見若しくは説明を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
3 市長は、協議会があっせんを行うことが相当であると答申した場合には、当該事案につき、あっせんを行う。
茨木市 (定義) 第2条
6 この条例において「障害を理由とする差別」とは、障害を理由とする不当な差別的取扱いにより障害のある人の権利利益を侵害すること又は合理的な配慮の提供をしないことをいう。
7 この条例において「障害を理由とする不当な差別的取扱い」とは、正当な理由なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害のある人を排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付ける等の取扱いをすることをいう。
8 この条例において「合理的な配慮の提供」とは、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(その者の家族、後見人又は支援者がその者を補佐して行ったものを含む。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害のある人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を提供することをいう。
(定義)第2条
1 この条例において「障害のある人」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(差別の禁止)
第7条 市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げることをしてはならない。
(1)障害を理由とする不当な差別的取扱いにより障害のある人の権利利益を侵害すること。
(2)合理的な配慮の提供をしないこと。

(市民及び市民活動団体並びに事業者の責務)
第5条 市民及び市民活動団体並びに事業者は、基本理念にのっとり、障害に対する理解を深めるとともに、「共に生きるまち茨木」の実現に取り組むよう努めるものとする。
(あっせん)
第11条 市長は、前条第1項の規定によるあっせんの申立てがあったときは、当該あっせんの申立てに係る事案について調査を行うものとする。
3 市長は、第1項の調査の結果により、あっせんを行うことの適否を決定し、あっせんを行うことが適当であると決定したときは、茨木市障害者差別解消支援協議会(以下この条、第13条第3項及び第14条において「協議会」という。)にあっせんを行うよう求めるものとする。
4 市長は、前項の規定によりあっせんを行うことの適否を決定する際に、協議会に助言を求めることができる。
5 協議会は、第3項の規定によるあっせんの求めがあったときは、あっせんを行うものとする。
6 協議会は、あっせんを行うために必要があると認めるときは、当該事案の当事者及び関係者に対し、あっせんを行うために必要な限度において、資料の提出及び説明を求めることその他の必要な調査を行うことができる。
7 協議会は、当該事案の解決のため必要なあっせん案(次条第1項において「あっせん案」という。)を作成し、これを当該事案の当事者に提示することができる。
8 協議会は、あっせんを終了したときは、その旨を市長に報告するものとする。

 表2.4-2に、資料調査の対象とした各地方公共団体の条例における関連規定を示す。調査項目と関連する条例の規定のポイントは次のとおりである。

[1] 差別の定義・概念について

  • 条例において、不当な差別的取扱いの定義等について、例えば「障害に関連する事由を理由として」等の文言を明記して、障害に関連する事由を理由とした差別等が含まれることを明確にしている。(新潟市、北九州市)

[2] 障害の定義・概念について

  • 条例において、障害者の定義の中で「難病」の文言を明記し、難病が定義に含まれていることを明確にしている。(香川県、新潟市、所沢市、北九州市)
  • 条例において、精神障害について「(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)」とし、難病については「難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)に起因する障害」と規定している。(所沢市)

[3] 事業者への合理的配慮の提供の義務付けについて

  • 条例において、合理的配慮の義務付けをしている。(香川県、大分県、新潟市)
  • 条例において、事業者は「その事業を行うに当たり(略)主体的かつ適切に合理的配慮をするように努めなければならない。」とし、「主体的かつ適切に」を加えることで努力義務を積極的に促す規定としている。(北九州市)
  • 条例上は、事業者への合理的配慮は努力義務とした上で、事業者を対象とする「合理的配慮促進事業」を実施している。(所沢市)

[4] 相談対応等の仕組みと地域協議会の役割について

  • 条例上、個別相談において当事者間の合意ができず解決できなかった場合には、合議体による事実の調査と助言を含むあっせん等の対応によって解決を図ることとしており、地域協議会や条例に規定された合議体があっせん等を担当している。(香川県、大分県、北九州市)
  • 条例上、個別相談において当事者間の合意ができずあっせんの申立てがあった事案について、市長は、必要があると認めた場合には合議体に対してあっせんを行うことについての審議を求め、その結果、あっせんが必要であると認められた場合には、市長が関係者に対してあっせんを行うことになっている。(新潟市)
  • 条例上、個別相談において当事者間の合意ができず、解決できなかった場合には、合議体があっせん案を作成し、市長は同あっせん案を基にあっせんを行うことになっている。(所沢市)
  • 条例において、地方公共団体が委託する相談機関に差別に関する相談をすることができるとしている。(大分県、新潟市、所沢市)
表2.4-2 資料調査の対象とした各地方公共団体の条例における関連規定(抜粋)
[1] 差別の定義・概念 [2] 障害の定義・概念 [3] 事業者への合理的配慮の提供の義務付け [4] 相談対応等の仕組みと地域協議会の役割
香川県 (なし) (定義)第2条
(1)障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病を原因とする障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
第8条 何人も、障害のある人に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
2 知事は、前項の行為を防止するため、福祉サービス、雇用、労働その他障害のある人の日常生活又は社会生活に関する分野において特に配慮すべき事項を別に定めるものとする。
(助言又はあっせん)
第12条 知事は、前条第1項の調査を行ったときは、香川県障害者相談等調整委員会に対し、当該調査の結果を通知するとともに、助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。
2 香川県障害者相談等調整委員会は、前項の規定による求めがあったときは、助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき、又は対象事案がその性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当でないと認めるときを除き、助言又はあっせんを行うものとする。
3 香川県障害者相談等調整委員会は、助言又はあっせんのため、必要があると認めるときは、関係当事者その他の関係者に対し、必要な資料の提出又は説明を求めることができる。
大分県 (定義)第2条
3 障がいを理由とする差別 障がいのある人に対して、障がいを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為(社会的障壁の除去に伴う負担が過重でない場合に、合理的配慮を怠ることを含む。)をいう。 
4 合理的配慮 障がいのある人が障がいのない人(障がいのある人以外の者をいう。以下同じ。)と同じように日常生活又は社会生活を営むため、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障がいのある人が意思の表明を行うことが困難である場合にあっては、当該障がいのある人の家族その他の関係者からの意思の表明を含む。)があった場合において、社会的障壁の除去について、現状を変更し、又は調整し、その他必要かつ合理的な配慮をすることをいう。

(福祉サービスの提供における障がいを理由とする差別の禁止)
第9条 福祉サービスの提供を行う者は、障がいのある人に対して福祉サービスを提供する場合において、正当な理由なく、障がいを理由として、福祉サービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをしてはならない。 ※第9条から第16条まで、分野別(福祉サービス、医療、商品の販売・サービス、労働及び雇用、公共的施設及び公共交通機関、不動産の取引、情報の提供及び受領、教育等)に、公的機関、事業者を対象に「障がいを理由とする不当な差別的取扱い」を規定している。
(定義)第2条
1 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(障がいを理由とする差別の禁止)
第8条 何人も、障がいを理由とする差別をしてはならない。
2 合理的配慮は、社会的障壁の除去に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう適切に行われなければならない。
(あっせん) 
第21条 知事は、前条第1項又は第2項の申立てがあったときは、大分県障害者施策推進協議会(以下「協議会」という。)に対し、あっせんの手続を開始するよう求めるものとする。
2 協議会は、前項の規定による求めがあったときは、次に掲げる場合を除き、あっせんを行うものとする。
一 あっせんの必要がないと認められるとき。
二 対象事案の性質上あっせんを行うことが適当でないと認められるとき。
3 協議会は、あっせんを行うために必要があると認めるときは、関係当事者から意見を聴取し、又は意見書その他の資料の提出を求めることができる。
新潟市 (定義)第2条
(3)差別 障がいのある人に対し、次に掲げる行為を行うことをいいます。
ア 福祉サービスを提供する場合において行う次に掲げる行為
(ア)障がい及び障がいに関連する事由(以下「障がい等」といいます。)を理由として、福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく、障がいのある人の意思に反して、入所施設における生活を強制すること。
(イ)正当な理由なしに、障がい等を理由として、福祉サービスの提供を拒否し、又は制限すること、障がいのない人(障がいのある人ではない者をいいます。以下同じです。)に対しては付けない条件を付けることその他不利益な取扱いをすること。
(ウ)合理的配慮を行わないこと

※ア~ケにおいて、分野別(医療、商品の販売又はサービスの提供、雇用、教育、公共的施設及び公共交通機関、不動産の取引、情報の提供及び受領、意思表示)に差別と定義する行為を列挙し、さらにコで、「アからケまでに掲げるもののほか、市又は事業者が、正当な理由なしに、(中略)不利益な取扱いをすること又は合理的配慮を行わないこと」としている。
(定義)第2条
(1)障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難病を原因とする障がいその他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称します。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいいます。
第5条 何人も、差別をしてはなりません。

※第2条(3)の差別の定義において、分野別に「合理的配慮を行わないこと」が規定されている。

(定義)第2条
(4)合理的配慮 次に掲げる場合において,障がいのある人の人格,人権及び意向を尊重し,障がいのある人の性別,年齢,障がいの状態等に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な変更及び調整を行うことであって,その実施に伴う負担が過重でないものをいいます。
ア 障がいのある人が社会的障壁の除去を求めている場合
イ 障がいのある人が意思の表明を行うことが困難であって、その保護者、保護者以外の家族その他の当該障害のある人を支援するものが、その障がいのある人のために社会的障壁の除去を求めている場合
ウ 障がいのある人が社会的障壁の除去を必要としている場合であって、そのことを認識しうるとき。
(相談)
第9条 何人も、市又は市が委託する相談機関に対し、次に掲げる事項について相談することができます。
(1)差別に関すること。
(2)障がいのある人に対する、正当な理由なしに、障がい等を理由として、区別し、排除し、又は制限すること、障がいのない人に対しては付けない条件を付けることその他不利益な取扱いに関すること。
(3)障がいのある人に対する合理的配慮に関すること。
(4)障がいのある人に対する障がいを理由とする言動であって、当該障がいのある人に不快の念を起こさせるものに関すること。

(助言又はあっせん)
第12条 市長は、前条第1項の調査の結果、必要があると認める場合は、第16条第1項に規定する調整委員会(以下この条において「調整委員会」といいます。)に対し、助言又はあっせんを行うことについて審議を求めるものとします。
2 調整委員会は、前項の審議のために必要があると認める場合は、その審議に係る障がいのある人、事業者その他の審議に必要な者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができます。
3 市長は、調整委員会が助言若しくはあっせんの必要があると認める場合又は申立て事案の性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当であると認める場合は、申立て事案に係る関係者に対し、助言又はあっせんを行うものとします。

(調整委員会の設置等)
第16条 市は,差別に係る紛争の解決を図ることを目的として、新潟市共生のまちづくりに関する調整委員会を設置します。
所沢市 (なし) (定義)第2条
(1)障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(市民及び事業者の責務)
第6条 市民及び事業者は、共生社会の実現に必要な施策に対し、市と協力して取り組むよう努めるものとする。
2 市民及び事業者は、障害のある人に合理的配慮をするように努めるものとする。
3 市民及び事業者は、自ら障害に対する理解を深めるよう努めるものとする。
(相談)
第13条 何人も、第2章及び前章の規定に関連する事項について、相談機関(市及び市が委託する相談業務を実施する事業所をいう。以下同じ。)に相談することができる。

(あっせんの実施) 
第15条 市長は、あっせんの必要があると認める場合は、第18条に定める所沢市社会的障壁の除去に関するあっせん調整委員会(以下「委員会」という。)に対し、あっせん案の作成を求めるものとする。
2 委員会は、前項のあっせん案を作成するに当たり、可能な限り当事者双方の意見を聴取しなければならない。この場合において、委員会は、必要があると認める場合は、当事者その他の審議に必要な者に対し、出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
3 市長は、委員会が作成したあっせん案を基に、あっせんを行うものとする。

(所沢市社会的障壁の除去に関するあっせん調整委員会の設置等)
第18条 この条例の規定に関するあっせん案の作成その他あっせんに関する事項の調整を目的として、所沢市社会的障壁の除去に関するあっせん調整委員会を置く 。
2 前項に定める事項のほか、委員会は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第18条に規定する事務を行う協議会と必要な情報交換を行うものとする。
北九州市 (定義)第2条
(3)障害を理由とする差別 不当な差別的取扱いをすること又は合理的配慮をしないことをいう。
(4)不当な差別的取扱い 障害又は障害に関連する事由(以下「障害等」という。を理由としてされる、財・サービス又は各種機会の提供の拒否又は提供の場所若しくは時間帯の制限、障害のない人(障害のある人以外の者をいう。以下同じ。)に対して付さない条件の付加等の区別、排除、制限その他の取扱い(障害のない人と同等の機会及び待遇の確保を推進すること等正当と認められる目的の下にされる取扱いを除く。)であって、当該取扱いを受けた人の権利利益を侵害することとなるものをいう。

(不当な差別的取扱いの禁止) 
第7条 市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げる取扱いその他の不当な差別的取扱いを行ってはならない。
(1)福祉サービスを提供する場合における次に掲げる取扱い
ア 障害のある人の生命又は身体の保護のためにやむを得ないと認められるときその他の合理的な理由があるときを除き、障害等を理由として、福祉サービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付けること。
イ 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく、障害のある人の意思に反して、障害者支援施設その他の福祉サービスを行う施設への入所(入居を含む。)又は通所を強制すること。

※第7条(1)~(8)において、分野別(福祉サービス、医療、商品の販売・サービス、労働及び雇用、教育、建物その他の施設・公共交通機関、不動産の取引、情報の提供又は意思表示を受ける場合等)に、「障害を理由とする差別の禁止」を規定している。
(定義)第2条
(1)障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関し、障害及び障害のある人に対する理解を深めるための研修その他の取組を行うよう努めなければならない。
2 事業者は、市が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市及び事業者が行う合理的配慮)第8条
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、主体的かつ適切に合理的配慮をするように努めなければならない。
(設置等) 
第11条 事業者又は市による障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図るため、市に北九州市障害者差別解消委員会(以下「委員会」という。)を置く。

(助言及びあっせん)
第15条 市長は、委員会に対し、前条第1項の規定による事実の調査の結果を通知するとともに、助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。
2 委員会は、前項の規定により助言又はあっせんを行うよう求められたときは、次に掲げる場合を除き、助言又はあっせんを行うものとする。
(1)助言またはあっせんを行う必要がないと認められるとき。
(2)第13条の申立てに係る事案の性質上、助言又はあっせんを行うことが適当でないと認められるとき。
3 委員会は、前項の助言又はあっせんを行うために必要があると認められるときは、当事者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。

 以上で整理した各対象地方公共団体の条例における規定内容から、各調査項目と調査対象地方公共団体の該当関係を整理すると、表2.4-3のとおりである。

表2.4-3 各調査項目と対象地方公共団体との関係
ヒアリング調査対象団体 資料調査対象団体
[1]差別の定義・概念 静岡県、滋賀県、茨木市 新潟市、北九州市
[2]障害の定義・概念 静岡県、滋賀県、立川市、茨木市 香川県、新潟市、所沢市、北九州市
[3]事業者への合理的配慮の提供の義務付け 秋田県、滋賀県、茨木市 香川県、大分県、新潟市
[4]相談対応等の仕組みと地域協議会の役割 秋田県、静岡県、滋賀県、立川市、茨木市 香川県、大分県、新潟市、所沢市、北九州市

前のページへ次のページへ