IV.障害者を捉える設問に関する調査 IV-4-1 (4)

4.調査の結果

1)インターネット調査

(4)ワシントングループの設問に係る追加分析(気分障害)

 ワシントングループの設問における「障害のある者」について、短い設問セットには含まれない気分障害に係る設問を加えた場合どの程度の者が「障害のある者」として捕捉されるかということについて分析を行った。

 本調査研究では、気分障害に関する設問は以下の2つを尋ねている。
 気分障害について、どこまでを「障害のある者」と捉えるかについては、国際的に合意された明確な定義やルールはないと考えられる。
 試案的に「毎日」という者を「障害のある者」と捉える場合、「1.心配や落ち着かない気持ちや不安を感じる」者については、ワシントングループの設問で「障害のない者」のうち、1,564名が該当する。すると、ワシントングループの設問で「障害のある者」が2,683名であるので、合算して4,247(2,683+1,564)名となり、全体(23,210名)に占める割合は18.3%となった。この割合はインターネット調査におけるワシントングループの設問の「障害のある者」に占める割合11.6%(p40参照)を6.7ポイント上回っている。
 同様に、「2.憂鬱を感じる」者については、ワシントングループの設問で「障害のない者」のうち、1,541名が該当する。すると、ワシントングループの設問で「障害のある者」が2,683名であるので、合わせて4,224(2,683+1,541)名となり、全体(23,210名)に占める割合は18.2%となった。この割合はインターネット調査におけるワシントングループの設問の「障害のある者」に占める割合11.6%(p40参照)を6.6ポイント上回っている。
 なお、「障害のない者」のうち「Q13-1.心配や落ち着かない気持ちや不安を感じる」・「Q13-2.憂鬱を感じる」のいずれかに「1.毎日」と回答した者は1,878名となった。これに「障害のある者」(2,683名)を加えると、4,561名となっており、全サンプルに占める割合は19.7%となった。この割合はインターネット調査におけるワシントングループの設問の「障害のある者」に占める割合11.6%(p40参照)を約8.1ポイント上回っている。

図表 36 ワシントングループの設問における「障害のある者」と気分障害の設問のクロス集計結果
(上段:実数、下段:割合)
Q13 Q13
1.心配や落ち着かない気持ちや不安を感じることは
どのくらい頻繁にありますか。
2.憂鬱を感じることはどのくらい頻繁にありますか。
1.毎日 2.週に1回程度 3.月に1回程度 4.年に2、3回程度 5.全くない 合計 1.毎日 2.週に1回程度 3.月に1回程度 4.年に2、3回程度 5.全くない 合計
合計 2,078 3,105 2,897 5,010 10,120 23,210 2,036 3,022 2,869 4,723 10,560 23,210
WG障害のある者 514 477 344 449 899 2,683* 495 448 378 418 944 2,683*
WG障害のない者 1,564* 2,628 2,553 4,561 9,221 20,527 1,541* 2,574 2,491 4,305 9,616 20,527
合計 9.0% 13.4% 12.5% 21.6% 43.6% 100.0% 8.8% 13.0% 12.4% 20.3% 45.5% 100.0%
WG障害のある者 19.2% 17.8% 12.8% 16.7% 33.5% 100.0% 18.4% 16.7% 14.1% 15.6% 35.2% 100.0%
WG障害のない者 7.6% 12.8% 12.4% 22.2% 44.9% 100.0% 7.5% 12.5% 12.1% 21.0% 46.8% 100.0%

 なお、最も厳格な考え方である18、「Q13-1.心配や落ち着かない気持ちや不安を感じる」・「Q13-2.憂鬱を感じる」のいずれについても「1.毎日」と回答した者は1,227名となった。これにワシントングループの設問の「障害のある者」(2,683名)を加えると、3,910名となっており、全サンプルに占める割合は16.8%となった。この割合はインターネット調査におけるワシントングループの設問で「障害のある者」に占める割合11.6%(p40参照)を約5.2ポイント上回った。


18 “Analytic Guidelines:Creating Disability Identifiers Using the Washington Group Extended Set (WG-ES) SPSS Syntax”においても、「1.毎日」と最も厳格な取り方がなされている。なお、米国における“Results of the Testing of the ESCAP/WG Extended Question Set on Disability”, ESCAPにおいては、不安や抑鬱の頻度と程度を収集・集計するような分析も行われている。

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