IV.障害者を捉える設問に関する調査 IV-4-1 (1)

4.調査の結果

1)インターネット調査

(1)データセットの特性

<1>サンプル:23,210名
<2>サンプルの属性
【実数】
合計 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80歳以上
合計 23,210 2,626 3,368 4,138 3,493 6,938 2,468 179
男性 11,228 1,346 1,687 2,119 1,780 2,942 1,250 104
女性 11,982 1,280 1,681 2,019 1,713 3,996 1,218 75
【割合】
合計 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80歳以上
合計 100.0% 11.3% 14.5% 17.8% 15.0% 29.9% 10.6% 0.8%
男性 48.4% 5.8% 7.3% 9.1% 7.7% 12.7% 5.4% 0.4%
女性 51.6% 5.5% 7.2% 8.7% 7.4% 17.2% 5.2% 0.3%
<国勢調査(平成27年)における割合(参照値)>
合計 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80歳以上
合計 100.0% 11.9% 15.0% 17.7% 14.9% 17.4% 13.5% 9.5%
男性 48.0% 6.1% 7.6% 8.9% 7.4% 8.5% 6.1% 3.3%
女性 52.0% 5.9% 7.4% 8.8% 7.5% 9.0% 7.3% 6.2%

 注記)調査実施時には、60代、70代、80代以上はまとめて「60代以上」とし、「60代以上」の国勢調査の割合を参照した。

<3>公的障害者制度の利用者の割合

 7.1%(25,461名中1,815名)
 ※25,461名は、予備調査におけるサンプルである。

<4>サンプル抽出フローと結果

 インターネット調査における、集計サンプルは以下のようなフローに基づいて抽出した。(実際の本フローにおける考え方はp25を参照)

図表 19 インターネット調査における集計サンプルの抽出フローとサンプル図表 19のテキスト版

<5>20歳以上における公的障害者制度の利用率に関する統計等の資料との比較

 公的障害者制度の利用率について、インターネット調査における本調査のサンプルと統計等の資料に基づくデータを比較した。インターネット調査は、20歳以上を対象に実施したため、統計等の資料については、可能な限り、年齢の区別のあるデータをもとに比較を行い20歳以上の利用率を抽出するように努めた。
 利用率に大きな差がある制度としては、「介護保険法によるサービス」が挙げられる。同サービスは65歳以上の高齢層を中心としたサービスであるため、70代、80代のサンプルが少ない本調査においては介護保険サービスの利用率(0.6%)が少なくなっていると考えられる。また、予備調査においては、公的障害者制度の利用状況を確認するために、検討チーム会合の議論の結果として、<1>身体障害者手帳を所持している、<2>療育手帳を所持している、<3>精神障害者保健福祉手帳を所持している、<4>障害年金を受給している、<5>障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給しているの5つの制度を列挙してその利用有無を尋ねたが、予備調査で上記制度を利用していない者の中には、予備調査と本調査の実施が異なる時点であったため、一部本調査に回答していただけない者がおり、この者の中に介護保険法によるサービス利用者がいた可能性などがあることも介護保険法によるサービスの利用者割合が少ない一因となっていると考えられる。しかしながら、本調査に回答いただけなかった者は1,024人のみであるため、この点が介護保険法によるサービス利用者が極端に少ないことを十分に説明するわけではない。
 また、モニター調査である本インターネット調査のサンプルは「精神障害者保健福祉手帳」、「障害者総合支援法に基づく自立支援給付」の利用者が多いという特性を持つ。この点、多様な観点から国民の属性と全く同じサンプルを実現することには限界があり、上記のような特性があることに留意した上で本報告書を見ることが必要である。

図表 20 公的障害者制度の利用者の比較(インターネット調査と統計等)
インターネット調査 統計等の資料 資料
20歳以上 20歳以上
利用者数
(単位:人)
利用率 利用者数
(単位:千人)
利用率
1.身体障害者手帳を所持している 775 3.3% 4,987 4.8% 「福祉行政報告例」の平成30年度末現在における台帳登載数。同資料には20歳以上の年齢区分がないため、「統計等の資料」の利用率は、18歳以上のデータで推計。
2.療育手帳を所持している 99 0.4% 836 0.8% 「福祉行政報告例」の平成30年度末現在における台帳登載数。同資料には20歳以上の年齢区分がないため、「統計等の資料」の利用率は、18歳以上のデータで推計。
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  53 0.2% データは存在せず(厚生労働省確認)
4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 608 2.6% 1,063 1.0% 「衛生行政報告例」の平成30年度末現在における台帳登載数。同資料には年齢区分がないため、「統計等の資料」の利用率は、全年齢のデータで推計。(「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」によると、手帳所持の20歳未満の構成比は2.1%なので、全年齢のデータを活用)
5.障害年金を受給している  569 2.5% 1,796 1.7% 「年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)」(平成26年)
6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 479 2.1% 848 0.8% 厚生労働省障害保健福祉部企画課提供資料より(令和元年11月時点)
7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  141 0.6% 平成30年(2018年度)度の利用者数(厚生労働省障害者雇用対策課提供)
障害者職業センター:31,977人
障害者就業・生活支援センター:188,440人
(年間の延べ人数のため活用せず)
8.介護保険法によるサービスを利用している 102 0.6% 6,413 8.5% 「介護保険事業状況報告」(平成29年度)
※平成29年度末の要介護(要支援)認定者数。第1号被保険者(65歳以上)に第2号被保険者(40歳以上65歳未満)を加えており、対象は40歳以上となる。
(利用率は、インターネット調査では40歳以上のサンプル数で割って算出。統計等の資料では、40歳以上人口の75,761,015人で割って算出)
9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  237 1.0% 906 0.9% 厚生労働省衛生行政報告例(平成30年度末現在)
10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 85 0.4% その他に何が含まれるか不明のため、利用率は記載せず。
参考)インターネット調査:サンプル(人)
統計等の資料:人口(千人)
23,210 103,746 利用率は、利用者数を、左記のサンプル数、人口(20歳以上人口)で割ってそれぞれ算出している。ただし、介護保険法によるサービスの利用率は、40歳以上のサンプル数、人口で算出。
<6>全数調査と60歳未満の調査の結果の比較

 60歳以上のサンプルが多く、全数調査だけで見ると特に就労関係の集計結果が影響を受ける可能性があることから、60歳未満のみのサンプルを対象とした分析を実施した。いくつかの重要な設問や、就労関係の設問を中心に整理した。
 以下の図表では、ワシントングループの設問(WGと表記)、欧州統計局の設問(ESと表記)のそれぞれの設問で「障害のある者」として捕捉された者について、いくつかの設問の特定の選択肢における回答割合を記載している。
 まず、就労関係の設問であっても、全数と60歳未満で、それぞれの設問における「回答の傾向」(回答が多い者→回答が少ない者の選択肢の順番)についてはほぼ同じであることから、全数調査と60歳未満で回答の傾向・順番を大きく変え得るようなバイアスは生じていないと考えられる。
 一方で、就労関係の設問のクロス集計を中心に、「全数-60歳未満(差異)」のポイント差が大きいものが多い(例:欧州統計局で「10.就職希望の有無:「したいと思っている」者」では、全数で34.5%に対し、60歳未満で56.1%となっており、差が約21.6ポイントとなっている)。そのため、例えば上記で例に挙げた就業希望の有無の「程度」については、60歳未満のデータだけを見ることも有益と考えられる。(例えば、「就職希望を持つ者の割合」についての施策目標を設定しようと考える場合には、60歳未満だけで見て、70%を目標とする、というような考え方が可能)。

図表 21 全数調査と60歳未満調査の比較表(サマリ)
※値は全て割合であり、単位はパーセンテージ(%)。
WG及びESの設問で「障害のある者」となった者の、該当する設問の割合である。
回答の傾向 WG ES 全数-60歳未満(差異)
全数
<1>
60歳未満
<2>
全数
<3>
60歳未満
<4>
WG
(全数-60未満)
<1>-<2>
ES
(全数-60未満)
<3>-<4>
1 「障害のある者」の割合
全体 11.6* 12.6* 17.3* 16.5* -1.0 0.7
公的障害者制度利用者 35.3* 36.0* 65.9* 65.7* -0.7 0.2
公的障害者制度非利用者 9.5* 10.4* 13.1* 11.8* -0.9 1.3
2 公的障害者制度の利用状況(「障害のある者」の割合) 0.0 0.0
身体障害者手帳の所持 43.4* 47.8* 69.7* 72.3* -4.4 -2.7
療育手帳の所持 51.5* 52.2* 65.7* 65.2* -0.7 0.4
精神障害者保健福祉手帳の所持 30.8* 31.9* 67.8* 69.2* -1.1 -1.4
障害年金の受給 45.0* 43.9* 73.5* 73.5* 1.1 -0.1
難病法に基づく医療費助成の利用 35.4* 35.5* 73.4* 71.1* -0.1 2.4
3 手助け・見守りの必要性:必要としている者 16.0* 16.4* 15.4* 18.3* -0.4 -2.9
4 気分障害(心配・不安を感じる頻度):「毎日」の者 19.2* 22.7* 25.5* 33.9* -3.5 -8.4
5 前月中の仕事の有無:「(仕事あり)主に仕事をしている」者 46.7** 57.1** 38.4** 49.5** -10.4 -11.1
6 就業日数:前週中の仕事をした日数が「5日」の者 62.2* 68.4* 54.8* 59.7* -6.2 -4.8
7 1年間の収入又は収益:「400~499万円」の者 10.1* 10.1* 9.6* 10.2* 0.0 -0.7
8 勤務形態:「一般常雇用者(契約期間の定めのない雇用者)」の者 54.3* 62.6* 47.4* 57.1* -8.3 -9.7
9 勤め先での呼称:「正規の職員・従業員」とする者 64.2* 69.9* 55.4* 61.5* -5.7 -6.1
10 就職希望の有無:「したいと思っている」者 × 33.1** 46.1** 34.5*** 56.1*** -13.0 -21.6
11 就業時に希望する勤め先での呼称:「正規の職員・従業員」とする者 12.2* 21.9* 11.0** 21.4** -9.7 -10.5
12 即時の就業の可否:「つける」とする者 27.3* 25.1* 26.2* 24.5* 2.2 1.6
13 求職の状況:「探している」者 × 44.7** 62.7** 42.5*** 64.4*** -18.0 -21.9
14 仕事につけない理由(複数回答):「健康に自信がない」者 57.1* 52.0* 76.3* 81.8* 5.1 -5.5

 注)「回答の傾向」については、同一の設問において、複数選択肢がある場合に、選択されている割合が高い選択肢から低い選択肢に順番に並べた場合の、順序を意味している(図表の×は回答の傾向が異なるもの)。
 例えば、以下の図表の“ワシントングループの設問で「障害のある者」と「障害のない者」の仕事につけない理由(仕事につけない理由は複数回答)”を例に取ると、各選択肢の割合(程度)に差はあるが、選択されている割合が高い選択肢から低い選択肢に並べた場合の順序は同一であり、このような場合には「回答の傾向」は同じ、としている。

Q24S2:仕事につけない理由について、お答えください
1.出産・育児のため 2.介護・看護のため 3.健康に自信がない 4.その他
(全数)
WG障害のある者
割合 5.7% 4.7% 57.1% 43.0%
順番 (3位) (4位) (1位) (2位)
(60歳未満)
WG障害のある者
割合 11.3% 4.5% 52.0% 46.0%
順番 (3位) (4位) (1位) (2位)

 注)順番は、4つの選択肢で多い順である。

 なお、「1.障害のある者の割合」や「2.公的障害者制度の利用状況(「障害のある者」の割合)」については、複数の選択肢があるわけではなく、回答の傾向は問題とならないため、「-」と記載している。

 注)色の凡例
 上記の表に係る色の凡例は、以下である。
 緑(*)のセル:「全数-60歳未満」のポイント差が10.0未満
 黄(**)のセル:「全数-60歳未満」のポイント差が10.0~20.0未満
 ピンク(***)のセル:「全数-60歳未満」のポイント差が20以上

 データセットの特性については、「<2>サンプルの属性」で見たように、性別及び年齢階層別の割合については、60代が多く、70代、80歳以上が少ないが、それ以外は実際の国民の割合とほぼ同じである。また、「<6>全数調査と60歳未満の調査の結果の比較」に基づいても、60歳未満だけの分析と回答の傾向に大きな差は生じていない。一方で、「<5>公的障害者制度の利用率に関する統計等の資料との比較」では、例えば介護保険法によるサービス利用者の割合がインターネット調査は相対的に少ないという特徴等がある。この点、多様な観点から国民の属性と全く同じサンプルを実現することには限界があり、例えば、中高年においては介護保険法によるサービス利用者が相対的に少ない等の特性に留意した上で本報告書を見ることが必要である。

<公的障害者制度利用状況と他の制度の利用状況>

 以下は、公的障害者制度の利用状況について複数回答(MA)で回答してもらった結果を示す集計表である。例えば、「身体障害者手帳を所持している者」が他にどのような公的障害者制度を利用しているのかを横軸で見ることができる。

図表 22 公的障害者制度利用状況と他の制度の利用状況

【実数】
該当者数 Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。
1.身体障害者手帳を所持している 2.療育手帳を所持している 3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 5.障害年金を受給している  6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  8.介護保険法によるサービスを利用している 9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。 1.身体障害者手帳を所持している 775 40 21 50 245 89 47 70 83 24
2.療育手帳を所持している 99 40 18 28 48 28 25 13 13 2
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  53 21 18 18 19 15 18 11 8 0
4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 608 50 28 18 279 265 84 21 25 18
5.障害年金を受給している  569 245 48 19 279 221 72 45 53 25
6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 479 89 28 15 265 221 68 23 35 15
7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  141 47 25 18 84 72 68 17 22 10
8.介護保険法によるサービスを利用している 129 70 13 11 21 45 23 17 25 9
9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  237 83 13 8 25 53 35 22 25 6
10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 85 24 2 0 18 25 15 10 9 6
11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
【割合】
該当者数 Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。
1.身体障害者手帳を所持している 2.療育手帳を所持している 3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 5.障害年金を受給している  6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  8.介護保険法によるサービスを利用している 9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。 1.身体障害者手帳を所持している 775 5.2% 2.7% 6.5% 31.6% 11.5% 6.1% 9.0% 10.7% 3.1%
2.療育手帳を所持している 99 40.4% 18.2% 28.3% 48.5% 28.3% 25.3% 13.1% 13.1% 2.0%
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  53 39.6% 34.0% 34.0% 35.8% 28.3% 34.0% 20.8% 15.1% 0.0%
4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 608 8.2% 4.6% 3.0% 45.9% 43.6% 13.8% 3.5% 4.1% 3.0%
5.障害年金を受給している  569 43.1% 8.4% 3.3% 49.0% 38.8% 12.7% 7.9% 9.3% 4.4%
6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 479 18.6% 5.8% 3.1% 55.3% 46.1% 14.2% 4.8% 7.3% 3.1%
7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  141 33.3% 17.7% 12.8% 59.6% 51.1% 48.2% 12.1% 15.6% 7.1%
8.介護保険法によるサービスを利用している 129 54.3% 10.1% 8.5% 16.3% 34.9% 17.8% 13.2% 19.4% 7.0%
9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  237 35.0% 5.5% 3.4% 10.5% 22.4% 14.8% 9.3% 10.5% 2.5%
10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 85 28.2% 2.4% 0.0% 21.2% 29.4% 17.6% 11.8% 10.6% 7.1%
11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない

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