IV.障害者を捉える設問に関する調査 IV-4-1 (3)

4.調査の結果

1)インターネット調査

(3)3つの設問により「障害のある者」として捕捉された者の相互関係・重なり合い

<1>公的障害者制度も含めた上での重なり合い

 今回の調査対象とした3つの設問全てで「障害のある者」として捕捉された者(735名)の公的障害者制度の利用状況を分析した。3つの設問全てで「障害のある者」として捕捉され、かつ公的障害者制度を利用している者は、3つの設問で全て「障害のある者」として捕捉された全サンプル(735名)のうち59.0%であり16、半数をやや上回る程度である。なお、この分析では、WHODAS2.0は「障害のある者」の定義がないため、仮に置いたスコアに基づく分析である点には留意が必要である。
 なお、「障害のある者」の定義があるワシントングループの設問、欧州統計局の設問だけが重複している328名についても、「(選択肢として列挙した)公的障害者制度は利用していない」と回答した者が256名(78.0%)で大半を占めており、新たな設問の「障害のある者」を捕捉することで、公的障害者制度の利用有無だけでは捕捉しきれなかった、「障害のある者」を捕捉できる可能性がある。

図表 27 ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0の該当者の重なり合いと公的障害者制度の利用状況の関係
(公的障害者制度の利用状況は複数回答)

【実数】
該当者数 Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。
1.身体障害者手帳を所持している 2.療育手帳を所持している 3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 5.障害年金を受給している  6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  8.介護保険法によるサービスを利用している 9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
合計 23,210 775 99 53 608 569 479 141 129 237 85 21,395
WG,ES,WHODASの全てにおいて『障害のある者』 735 241 37 24 135 203 118 50 70 67 27 301
WG及びESにおいて『障害のある者』(但し、WHODASは『障害のない者』) 328 46 4 0 10 17 14 5 2 7 6 256
ES及びWHODASにおいて『障害のある者』(但し、WGでは『障害のない者』) 779 96 9 5 157 111 112 19 22 31 13 460
WG及びWHODASにおいて『障害のある者』(但し、ESでは『障害のない者』 392 21 6 6 25 20 24 15 7 6 2 312
【割合】
該当者数 Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。
1.身体障害者手帳を所持している 2.療育手帳を所持している 3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 5.障害年金を受給している  6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  8.介護保険法によるサービスを利用している 9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
合計 23,210 3.3% 0.4% 0.2% 2.6% 2.5% 2.1% 0.6% 0.6% 1.0% 0.4% 92.2%
WG,ES,WHODASの全てにおいて『障害のある者』 735 32.8% 5.0% 3.3% 18.4% 27.6% 16.1% 6.8% 9.5% 9.1% 3.7% 41.0%
WG及びESにおいて『障害のある者』(但し、WHODASは『障害のない者』) 328 14.0% 1.2% 0.0% 3.0% 5.2% 4.3% 1.5% 0.6% 2.1% 1.8% 78.0%
ES及びWHODASにおいて『障害のある者』(但し、WGでは『障害のない者』) 779 12.3% 1.2% 0.6% 20.2% 14.2% 14.4% 2.4% 2.8% 4.0% 1.7% 59.1%
WG及びWHODASにおいて『障害のある者』(但し、ESでは『障害のない者』 392 5.4% 1.5% 1.5% 6.4% 5.1% 6.1% 3.8% 1.8% 1.5% 0.5% 79.6%

(ワシントングループの設問及び欧州統計局の設問における「障害のある者」と公的障害者制度の利用者の重なり合い)

 本調査研究の結果、ワシントングループの設問、欧州統計局の設問において「障害のある者」として捕捉された者及び公的障害者制度の利用者の相互関係・重なり合いは以下のようになった。
 ワシントングループの設問、欧州統計局の設問で「障害のある者」に該当し、かつ公的障害者制度の利用者にも該当するのは、506名であり、全体の約2.2%である。

図表 28 ワシントングループの設問及び欧州統計局の設問における「障害のある者」と公的障害者制度の利用者の重なり合い(全サンプル23,210名における割合)17図表 28のテキスト版

 公的障害者制度の利用者を全サンプル(100%)としてみた場合、公的障害者制度の利用者の27.9%(506名)がワシントングループの設問、欧州統計局のいずれでも「障害のある者」と捕捉され、逆にワシントングループの設問、欧州統計局のいずれでも「障害のある者」として捕捉されなかった者は26.7%(484名)である。

図表 29 ワシントングループの設問及び欧州統計局の設問における「障害のある者」と公的障害者制度の利用者の重なり合い(公的障害者制度の利用者1,815名における割合)図表 29のテキスト版

 ワシントングループの設問「障害のある者」を全サンプル(100%)としてみた場合、公的障害者制度の利用者は23.9%(5.0%+18.9%)と四分の一程度である。公的障害者制度の利用者とも欧州統計局の「障害のある者」とも重複しない者が55.3%と半数を超えている。

図表 30 ワシントングループの設問及び欧州統計局の設問における「障害のある者」と公的障害者制度の利用者の重なり合い(ワシントングループの設問で「障害のある者」2,683名における割合)図表 30のテキスト版

 欧州統計局の設問で「障害のある者」を全サンプル(100%)としてみた場合、公的障害者制度の利用者は29.8%(12.6%+17.2%)と三分の一程度である。公的障害者制度の利用者ともワシントングループの設問の「障害のある者」とも重複しない者が56.3%と半数を超えている。

図表 31 ワシントングループの設問及び欧州統計局の設問における「障害のある者」と公的障害者制度の利用者の重なり合い(欧州統計局の設問で「障害のある者」4,008名における割合)図表 31のテキスト版

<2>ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0の「障害のある者」の重なり合い

(全体的な重なり合い)

 本調査研究の結果、3つの設問によって「障害のある者」として捕捉された者の相互関係・重なり合いは以下のようになった。
 WHODAS2.0は「障害のある者」の定義がないため、本調査研究において仮に置いたスコアに基づく分析である点には留意が必要であるが、3つの設問のいずれかにおいて「障害のある者」として捕捉されたのは6,112名であり、全体の約26.3%である。
 また、3つの設問のいずれにおいても「障害のある者」に該当するのは、735名であり、全体の約3.2%である。
 それぞれ、「障害のある者」の定義のある、ワシントングループの設問と欧州統計局の設問についていずれも「障害のある者」として捕捉された者は1,063名であり(328+735)、全体の4.6%にとどまる。これは、ワシントングループの設問と欧州統計局の設問のそれぞれにおける「障害のある者」の全体から見ても必ずしも多くはなく(ワシントングループの設問で「障害のある者」として捕捉された2,683名中1,063名で約39.6%、欧州統計局の設問で「障害のある者」として捕捉された4,008名中1,063名で約26.5%)、ワシントングループの設問と欧州統計局の設問で捕捉する「障害のある者」の重複の割合は必ずしも多くない(2-4割程度)

図表 32 ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0の「障害のある者」の重なり合い(全サンプル23,210名における割合)図表 32のテキスト版

【実数】
WG判定 EURO判定 WHODAS判定
合計 23,210 合計 23,210 合計 23,210
あり 2,683 あり 1,063 あり 735
なし 328
なし 1,620 あり 392
なし 1,228
なし 20,527 あり 2,945 あり 779
なし 2,166
なし 17,582 あり 484
なし 17,098
【割合】
WG判定 EURO判定 WHODAS判定
合計 100.0% 合計 100.0% 合計 100.0%
あり 11.6% あり 4.6% あり 3.2%
なし 1.4%
なし 7.0% あり 1.7%
なし 5.3%
なし 88.4% あり 12.7% あり 3.4%
なし 9.3%
なし 75.8% あり 2.1%
なし 73.7%

(3つの設問をそれぞれ全サンプル(100)と見た場合の重なり合い)

 ワシントングループの設問で「障害のある者」を全サンプル(100%)として他の2設問における「障害のある者」との重なり具合を見た。ワシントングループの設問で「障害のある者」として捕捉され、かつ欧州統計局の設問・WHODAS2.0でも「障害のある者」として捕捉されたのは27.4%である。
 また、欧州統計局の設問で「障害のある者」として捕捉された者1,063名(39.6%)、WHODAS2.0で「障害のある者」として捕捉された者との重複は1,127名(42.0%)とWHODAS2.0で「障害のある者」として捕捉された者の方が重複割合は多い。
 なお、他の2つの設問における「障害のある者」には重複しない者も1,228名(45.8%)と半数近くを占める。

図表 33 ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0の「障害のある者」の重なり合い(ワシントングループの設問で「障害のある者」2,683名における割合)図表 33のテキスト版

 欧州統計局の設問で「障害のある者」を全サンプル(100%)として他の2設問における「障害のある者」との重なり具合を見た。欧州統計局で「障害のある者」として捕捉され、かつワシントングループの設問・WHODAS2.0でも「障害のある者」として捕捉されたのは18.3%である。
 また、ワシントングループの設問で「障害のある者」として捕捉された者との重複は1,063名(26.5%)、WHODAS2.0で「障害のある者」として捕捉された者との重複は1,514名(37.7%)とWHODAS2.0で「障害のある者」として捕捉された者の方が重複割合は多い。
 なお、他の2つの設問における「障害のある者」には重複しない者も2,166名(54.0%)と半数以上を占める。

図表 34 ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0の「障害のある者」の重なり合い(欧州統計局の設問における「障害のある者」4,008名における割合)図表 34のテキスト版

 WHODAS2.0で「障害のある者」を全サンプル(100%)として他の2設問における「障害のある者」との重なり具合を見た。WHODAS2.0で「障害のある者」として捕捉され、かつワシントングループの設問・欧州統計局の設問でも「障害のある者」として捕捉されたのは30.8%である。
 また、ワシントングループの設問で「障害のある者」として捕捉された者との重複は1,127名(47.2%)、欧州統計局の設問で「障害のある者」として捕捉された者との重複は1,514名(63.4%)と欧州統計局の設問の方が重複割合は多い。
 なお、他の2つの設問における「障害のある者」には重複しない者は484名(20.3%)であり、ワシントングループの設問で「障害のある者」を全サンプル(100)と見た場合、欧州統計局で「障害のある者」を全サンプル(100)と見た場合よりは相対的に少なかった。

図表 35 ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0の「障害のある者」の重なり合い(WHODAS2.0で「障害のある者」2,390名における割合)図表 35のテキスト版


16 何らかの公的障害者関連制度を利用している者は735-301=434名(59.0%)である。
17 ベン図はhttp://www.benfrederickson.com/venn-diagrams-with-d3.js/ により作成したものを加工した。以下同じ

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