4.公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化の推進
(1)公共交通機関のバリアフリー化
ア 法令等に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進
<1> 「バリアフリー法」に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進
公共交通機関のバリアフリー化については、平成12年11月に施行された「交通バリアフリー法」に基づく取組が行われてきたが、「バリアフリー法」においても、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設、大改良及び車両等の新規導入に際しての移動等円滑化基準(「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準」(18年国土交通省令第111号))への適合を義務付けている。既設の旅客施設・車両等についても移動等円滑化基準に適合させるよう努めなければならないこととしている。
<2> 旅客施設に関するガイドラインの策定
平成13年8月に策定された「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」について、「バリアフリー法」及び「公共交通移動等円滑化基準」の施行を契機に必要な見直しを行い、19年7月に「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を策定した。整備ガイドラインの対象施設は、同法に定められた旅客施設(鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル施設)とし、主な対象者は、高齢者、障害のある人などの移動制約者を念頭におきつつ、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に配慮することとしている。
<3> 車両等に関するガイドライン等の整備
平成13年3月に策定された「公共交通機関の車両に関するモデルデザイン」について、「バリアフリー法」及び「公共交通移動等円滑化基準」の施行を契機に必要な見直しを行い、19年7月に「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を策定した。整備ガイドラインの対象は、同法に定められた車両等(鉄軌道車両、バス車両、福祉タクシー車両、航空機)とし、主な対象者は、旅客施設のガイドラインと同様である。
平成15年3月に「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様」を策定し、16年1月に標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設した。
また、「バリアフリー法」が施行されたことを受け、「旅客船バリアフリー~設計マニュアル」の見直しを行い、平成19年8月、新たに「旅客船バリアフリーガイドライン」を策定した。本ガイドラインは、障害のある人等をはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応え、すべての利用者がより円滑に旅客船を利用できるようなバリアフリー化の指針として、その望ましい整備内容等を示している。
イ 施設整備及び車両に対する支援体制の整備
<1> 交通ターミナルにおけるエレベーター、エスカレーター等の施設の整備に対する助成及び融資
平成23年度より、地域公共交通確保維持改善事業において、鉄軌道駅等のバリアフリー化に要する経費の一部補助を実施している。
また、地方公営企業の交通事業のうち、既存の公営地下鉄のバリアフリー化に係る事業に対する地方公共団体金融機構の融資制度が設けられている。
<2> 障害のある人にやさしい車両の整備についての助成及び融資
ノンステップバス、リフト付きバス、福祉タクシー、低床式路面電車(LRV)等の導入に対して、地域公共交通確保維持改善事業等において補助を行っており、平成16年に標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設し、補助を重点化して交付している。
障害のある人のための車両整備に対する低利融資制度として、リフト付きバス・タクシー、スロープ付きバス・タクシー及びノンステップバス等に対する日本政策金融公庫の融資制度が設けられているとともに、地方公営企業が行うバス事業及び路面電車事業においても同様の融資制度が地方公共団体金融機構において設けられている。また、低床式路面電車(LRV)に対する固定資産税の特例措置が講じられている。
<3> 地域公共交通確保維持改善事業及び共有建造における国内旅客船のバリアフリー化の推進
平成23年度より、地域公共交通確保維持改善事業において、高度バリアフリー化船の建造及び船舶のバリアフリー化のための改造に要する経費の一部補助を実施している。
バリアフリーの高度化・多様化に資する船舶(車いす対応トイレ、エレベーター等障害のある人等の利便性及び安全性の向上に資する設備を有する船舶)を共有建造する場合に、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の分担割合の上限を引き上げる措置が講じられており、平成18年度より、事業金利の引き下げ措置が講じられている。
(2)歩行空間等のバリアフリー化
ア 福祉のまちづくりの推進
障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加していく上で、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくことの重要性が、近年、広く認識されるようになっている。このため、幅の広い歩道の整備や建築物の出入口の段差の解消、鉄道駅舎のエレベーターの設置、音響信号機等の整備等による障害のある人の円滑な移動の確保、公園整備等による憩いと交流の場の確保等、福祉の観点も踏まえた総合的なまちづくりが各地で進められている。
国土交通省においては、「バリアフリー法」に基づき、公共交通機関、建築物、道路等の一体的・連続的なバリアフリー化を推進している。
このほか、福祉のまちづくりへの取組を支援するため、以下のような施策を実施している。
<1> 公共交通機関の旅客施設等を中心としたまちのバリアフリー化の推進
障害のある人が介助なしに外出し、公共交通機関を利用できるようにするためには、歩行者交通、自動車交通、公共交通が連携し、一連の円滑な交通手段を確保することが必要である。このため、駅等の交通結節点において道路・街路事業等により駅前広場やペデストリアンデッキ、自由通路等を整備するとともに、エレベーター、エスカレーター等の歩行支援施設の整備や沿道の建築物との直接接続を行っている。
また、路面電車の新設・延伸の支援を目的として、道路・街路事業により路面電車が走行する路面等の整備を推進するとともに、駅周辺における歩行空間の整備を推進している。
さらに、障害のある人等に配慮した活動空間の形成を図り、障害のある人等が積極的に社会参加できるようにするために、快適かつ安全な移動を確保するための動く道路、エレベーター等の施設の整備や障害のある人等の利用に配慮した建築物の整備等を行う「バリアフリー環境整備促進事業」を実施している。
<2> 農山漁村における生活環境の整備
農林水産省においては、障害のある人に配慮した生活環境の整備を図るため、「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」により支援している。
この交付金を活用して、農山漁村地域においては、広幅員の歩道整備、農業施設のバリアフリー化の整備等が行われている。
<3> 普及啓発活動の推進
最近における地方公共団体の動きとしては、総合的なまちづくりを効果的に進めるために、福祉のまちづくりに関する条例の制定など制度面の整備が行われるとともに、事業面においても、ユニバーサルデザインによるまちづくり(すべての人にやさしいまちづくり)が行われている。
総務省では、地方公共団体が行う高齢者、障害のある人、児童等すべての人が自立していきいきと生活し、人と人との交流が深まる共生型の地域社会の実現に向けた取組を支援するため、ハード・ソフト両面から必要な地方財政措置を講じている。ソフト事業として、ユニバーサルデザインによるまちづくりやNPO 等の活動の活性化を推進する地方公共団体の取組に要する経費に対して、普通交付税措置を行うとともに、ハード事業として、ユニバーサルデザインによるまちづくり、地域の少子高齢化社会を支える保健福祉施設整備、共生社会を支える市民活動支援のための施設整備等に対して、地域活性化事業債等により財政措置を講じている。
また、国民一人ひとりが、高齢者や障害のある人の困難を自らの問題として認識し、その社会参加に積極的に協力する「心のバリアフリー」社会を実現するため、国土交通省では小・中学校の総合学習等とも連携しながらバリアフリー教室を開催している。
イ 都市計画等による取組
都市計画における総合的な福祉のまちづくりに関する取組としては、適切な土地利用や公共施設の配置を行うとともに、障害のある人に配慮した道路、公園等の都市施設の整備、土地区画整理事業や市街地再開発事業などの面的な都市整備を着実に進めていることが挙げられる。
中心市街地等における面的な都市整備に当たっては、社会福祉施設の適正かつ計画的な立地を進めている。
市町村が具体の都市計画の方針として策定する「市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン)」の中に、まちづくりにおける高齢者や障害のある人等への配慮を積極的に位置付け、都市計画に反映することもできる。
全国の都市の再生を効率的に推進する観点から、地域の創意工夫を生かした個性あふれるまちづくりを実施するため、都市再生整備計画に基づく事業(都市再生整備計画事業)に対して、社会資本整備総合交付金による支援を行っている。本制度の活用により、全国各地において、地域住民の生活の質の向上と地域経済・社会の活性化に向けた取組が進められており、その一環として、バリアフリー化等を通じて、安心・快適に過ごせるまちづくりが多くの市町村で実施されている。
市街地再開発事業等においては、再開発ビルに一定の社会福祉施設等を導入するものを「福祉空間形成型プロジェクト」と位置付け、通常の助成対象に加え、共用通行部分整備費、駐車場整備費等を助成対象とするとともに、社会福祉施設等と一体的に整備する場合の整備費に関する助成額の割増を実施しており、これにより、再開発ビルへの社会福祉施設等の円滑な導入を促している。
また、バリアフリー化等に先導的に対応した施設建築物を整備する場合に生じる付加的経費について、別枠で補助を行っている。
ウ 歩行空間のバリアフリー化
移動はあらゆる生活活動に伴い発生する要素であり、また、就労、余暇を支える要素である。したがって、その障壁を取り除き、すべての人が安全に安心して暮らせる道路交通環境づくりを行うことが重要な課題となっており、信号機、歩道等の交通安全施設等の整備を推進している。
平成5年11月に、歩道等において車いす利用者も安心して通行できるよう「道路構造令」を改正し、歩道の最小幅員を拡大した。
平成12年には「交通バリアフリー法」に基づき、「重点整備地区における移動円滑化のために必要な道路の構造に関する基準」(12年建設省令第40号)を制定、13年4月には、身体に障害のある人や高齢者等が安全に、安心して通行できる歩行空間の確保のために、歩道や自転車道のための空間を独立して位置づける等を内容とする「道路構造令」の改正を実施した。
さらに、平成17年2月には重点整備地区以外の歩道においてもバリアフリーの観点を踏まえた整備を行うため、「歩道の一般的構造に関する基準」(都市・地域整備局長、道路局長通達)を改正した。
平成18年12月には、「バリアフリー法」の制定を受け、従来の移動円滑化基準と比べて歩道幅員、歩道の設置についての選択肢が広がった「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令」(18年国土交通省令第116号)を制定した。
平成20年12月には、「バリアフリー法」に基づき、移動等円滑化が特に必要な道路として、駅、官公庁施設等を相互に連絡する道路のうち、多数の高齢者、障害者等が通常徒歩で移動する道路の区間を特定道路として国土交通大臣が指定し、だれもが安心して通行できるよう、十分な幅員が確保された歩道等の整備、歩道の段差・傾斜・勾配の改善、立体横断施設へのエレベーター設置等を実施している。整備に当たっては、「バリアフリー法」を踏まえて、駅構内、病院など公共的施設のバリアフリー化やノンステップバスの導入等と連携して整備を行っている。
「バリアフリー法」の重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路に設置されている信号機等については、平成32年度までに、原則としてすべての当該道路においてバリアフリー化を実施することを目標として、整備を推進している。
携帯端末等を用いた安全で快適な歩行を支援するための情報提供を行う歩行者向けのITS(高度道路交通システム)を推進するとともに、PICS(歩行者等支援情報通信システム)について、平成15年度以降、視覚障害のある人等の利用の多い信号交差点等を中心に順次導入している。
冬期の安全で快適な歩行空間を確保するため、中心市街地や公共施設周辺等における除雪の充実や消融雪施設の整備等の冬期バリアフリー対策を実施している。
エ 路外駐車場のバリアフリー化
自宅から交通機関、まちなかまで連続したバリアフリー環境の実現を目指し、高齢者、身体に障害のある人等を含むすべての人々が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、路外駐車場のバリアフリー化を図ることが必要である。
「バリアフリー法」に路外駐車場のバリアフリー化が位置づけられ、同法の規定に基づき、「移動等円滑化のために必要な特定路外駐車場の構造及び設備に関する基準を定める省令」(平成18年国土交通省令第112号)を制定し、バリアフリー化を推進している。(22年度末現在の特定路外駐車場のバリアフリー化率:約45%)
また、同法の規定に基づく基本方針において、路外駐車場のバリアフリー化の目標を定めており、引き続き、目標達成に向け、地方公共団体及び関係団体等に対して周知・徹底を図り、路外駐車場のバリアフリー化を一層推進していくこととしている。
(3)移動支援
ア 福祉タクシー等の普及促進
障害のある人等の輸送をより便利にするため、地域公共交通確保維持改善事業(地域公共交通バリア解消促進等事業)により福祉タクシー車両の導入等に対して支援を行うなど、福祉タクシーの普及促進を図っている。
また、バス事業者やタクシー事業者によることが困難であり、地域の関係者が必要であると合意した場合にNPO 等による福祉有償運送を可能とする登録制度を創設し、平成18年10月1日より施行された。今後、福祉タクシーとNPO 等による福祉有償運送がそれぞれ多様なニーズに応じた輸送を提供することにより、障害のある人等の外出が促進されることが期待される。
平成22年度末における福祉タクシーの導入状況は、12,256両となっている。
また、屋外での移動が困難な障害のある人について、外出のための支援を行うことにより、地域における自立生活及び社会参加を促すため、「障害者自立支援法」に基づく地域生活支援事業において、各市町村が地域の特性や利用者のニーズに応じて、個別支援型、グループ支援型及び車両移送型など柔軟な形態で、ガイドヘルパーの派遣などのサービスを提供する「移動支援事業」を実施している。
イ 移動支援システムの研究開発
経済産業省では、障害のある人等がIT を活用して社会・経済に積極的に参画できる環境を整備するため、平成15年度から「障害者等IT バリアフリープロジェクト」を実施し、携帯端末を用いた移動支援システムの開発、愛・地球博及び東京大学構内における実証・評価試験を行い、規格原案のたたき台を作成した。19年度以降、前記の規格・標準化に向けた検討が行われ、22年度に「高齢者・障害者配慮設計指針-移動支援のための電子的情報提供機器の情報提供方法(JIST0901)」として規格化している。
また、携帯電話製造業者、電気通信関連団体、障害者・高齢者関係団体、学識経験者から構成される「情報通信アクセス協議会」のワーキンググループにおいて、障害のある人や高齢者が携帯電話を購入する際に目安とすることができるチェックリストの策定を行っている。
ウ 「オムニバスタウン構想」の推進
警察庁及び国土交通省では、バスの有する社会的意義(マイカーに比べて人・まち・環境にやさしい)が最大限に発揮されたまちづくりを目指す市町村及び関係者の取組を支援する「オムニバスタウン構想」を推進しており、障害のある人等移動制約者に配慮したノンステップバス、リフト付きバス等の導入の促進やバス停の整備等バスの利便性向上を図っている。平成22年度末現在14都市をオムニバスタウンに指定している。
エ 障害のある人に対する運賃・料金割引
鉄道、バス、タクシー、旅客船、航空等の各公共交通機関では、身体障害者手帳の交付を受けた身体に障害のある人・療育手帳の交付を受けた知的障害のある人及び常時介護を要するこれらの人の介護者に対して運賃・料金の割引を実施している。
有料道路では、身体障害者手帳の交付を受けた身体に障害のある人が自ら運転する場合や、身体に重度の障害のある人又は重度の知的障害のある人の移動のために介護者が運転する場合において、通行料金の割引を実施している。
また、精神障害者保健福祉手帳については、平成18年10月1日より身体障害者手帳及び療育手帳と同様に写真貼付を行うこととした。これにより、本人確認を容易にし、手帳の信頼性を向上させ、各自治体における公共施設の入場料や公共交通機関の運賃に対する割引等の支援の協力を得やすくして、一層の支援策が講じられるように促進を図っている。さらに、発達障害者及び高次脳機能障害者について、手帳の交付の対象であることを明確化するため、平成23年4月には、手帳の診断書の様式及び判定基準を改正した。
オ 駐車禁止の除外指定
各都道府県公安委員会が認める一定の身体障害のある人については、本人に対して駐車禁止除外指定車標章を交付し、駐車禁止規制の適用が除外されるよう措置しているところである。
カ ICT を活用した歩行者移動支援の推進
国土交通省では、ユニバーサル社会に向けて、高齢者や障害者をはじめ、誰もが積極的に活動できるバリアフリー環境の構築をソフト施策の面から推進することを目的に、歩道の段差等のバリア情報を含んだ歩行空間ネットワークデータの整備促進や実証実験事業等を行い、そこから得られた知見をもとに、地方公共団体等が円滑に導入可能なガイドライン案の検討を行った。
また、外部有識者を含めた勉強会を通じて、バリアフリー経路案内等にも活用できるICT(情報通信技術)による歩行者移動支援の促進を行った。
(4)バリアフリー情報の提供
平成19年6月に閣議決定した「観光立国推進基本計画」においても観光旅行者の利便の増進としてユニバーサルデザインの考え方に基づく観光の促進等が定められている。観光庁では、ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光を定着させるため、ユニバーサルデザインに配慮した旅行商品・旅行システムのあり方及び観光地のユニバーサルデザイン化のための手引き集の策定やその普及・啓発、高齢者や障害のある人等が参加しやすい旅行商品を企画・造成する際のチェックシートの作成を行ってきた。
平成22年度には、これまでの普及・啓発活動等を踏まえて、ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光について、全国における取組内容の調査を行うとともに、今後の普及・促進を考えるうえで必要な情報発信のあり方や相互連携について検討した。
さらに、財団法人交通エコロジー・モビリティ財団では、高齢者や身体に障害のある人等の移動支援のため、インターネットによるバリアフリー情報「らくらくおでかけネット」を運用している。当該ネットでは、約6,200の駅・ターミナルのバリアフリー情報を提供し、平成23年12月末時点で約977万件(14年1月の運用開始時からの累計)のアクセス数となっている。
(5)公園、水辺空間等のバリアフリー化
ア 公園整備における配慮
都市公園は、良好な都市環境の形成、地震災害時の避難地などの機能を有するとともに、スポーツ、レクリエーション、文化活動などを通じた憩いと交流の場であり、障害のある人の健康増進、社会参加を進める上で重要な役割を担っていることから、利便性及び安全性の向上を図ることが必要である。
平成18年12月には、「バリアフリー法」に基づき、同法施行令に定めるバリアフリー化が必要な公園施設(特定公園施設)の新設、増設又は改築を行う際の移動等円滑化の基準(都市公園移動等円滑化基準)を制定した(「移動等円滑化のために必要な特定公園施設の設置に関する基準を定める省令」(18年国土交通省令第115号))。
都市公園のバリアフリー化については、障害のある人を含むすべての人の利用に配慮した公園施設とするため、園路の幅の確保や段差・勾配の改善、車いす使用者を始め、多くの人にとって利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を行ってきており、都市公園移動等円滑化基準の運用等により、今後一層推進していくこととしている(平成22年度末現在の公園施設のバリアフリー率【園路及び広場:約47%、駐車場:約39%、便所:約32%】)。
また、平成20年1月には、バリアフリー化のための整備の具体的な指針として、「都市公園の移動等円滑化整備ガイドライン」(24年3月改訂)を策定し、公園管理者へ通知したほか、社会資本整備総合交付金により、都市公園のバリアフリー化を推進している。
全国の国営公園においては、身体等に障害のある人や介添する人に対する入園料金を免除することにより、野外活動の機会の増進や経済的負担の軽減を図っているほか、国営昭和記念公園等においては、障害のある人も楽しく安全に遊ぶことができるバリアフリー化した遊具等を設置している。
環境省では、国立公園等において、誰もが自然とふれあい、その魅力を楽しめるよう、利用拠点である集団施設地区等においてユニバーサルデザイン化を推進するためのガイドラインを策定し、ビジターセンターや園路、公衆トイレ等の主要な公園利用施設のバリアフリー化などを進めている。
イ 水辺空間の整備における配慮
河川、海岸等の水辺空間は、公園と同様に、障害のある人にとって憩いと交流の場を提供するための重要な要素となっている。このため、河川環境整備事業等を通じて、障害のある人等にも配慮した水と緑の空間の確保を行い、堤防・護岸の緩傾斜化、堤防及び管理用通路の設置などの自然空間と調和のとれた河川、海岸等の水辺空間づくりに取り組んでいる。
ウ 港湾緑地・マリーナ等における配慮
港湾緑地は、人々が港を訪れ、海に親しみながら寛げる空間として、重要性が高まってきており、誰もが快適に利用できるよう、計画段階から周辺交通施設との円滑なアクセス向上に配慮するとともに、施設面においてもスロープ、手すりの設置や段差の解消等のバリアフリー対応が図られるよう取り組んでいる。また、マリーナ等については、障害のある人でも気軽に安全に海洋性レクリエーションに参加できるよう、マリーナ等施設のバリアフリー化を推進している。
エ 森林・施設の整備における配慮
森林は、心身の癒しや健康づくりの場等として、幅広い国民に利用されている。森林の利用のための施設の整備に当たっては、年齢や障害の有無等にかかわらず多様な利用者に対応するため、ユニバーサルデザイン手法の普及を進めるとともに、地域自主戦略交付金における共生保安林整備事業等において、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた森林・施設の整備を支援している。