平成9年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果について 概要版

 平成9年度高齢者対策総合調査として、60歳以上の一般男女ならびに60歳以上で社会的な活動を行っている男女に対して意識調査を実施しました。その調査結果の概要は次のとおりです。

調査の概要

1 調査の目的

 21世紀初頭の本格的な高齢社会を目前に控え、心ゆたかな高齢社会を築くためには、国民一人一人がそれぞれの立場で地域社会に参加し、協力していくことが重要であり、特に高齢者には、これまで培ってきた、経験や能力を生かした積極的な参加が求められている。
 このため、本調査は、昭和63年、平成5年に引き続き、高齢者一般及び現在社会参加活動を行っている高齢者の社会参加活動の実態及び意識等を調査し、今後の高齢関係施策の推進に資することを目的とする。

2 調査対象者、調査方法、調査事項等

(1)調査対象者

調査I 全国の60歳以上の男女(以下「住民調査」という)
調査II (A)に掲げる団体に加入し、(B)に掲げる活動を行っている全国の60歳以上の男女(以下「活動者調査」という)

(A) 加入している団体
 ア) 老人クラブ
 イ) 町内会・自治会
 ウ) 婦人団体
 エ) 趣味のサークル・団体
 オ) 健康・スポーツのサークル・団体
 カ) 学習・教養のサークル・団体
 キ) 市民運動団体
 ク) 宗教団体(講などを含む)
 ケ) 社会奉仕団体(ボランティア団体)
 コ) 商工会・同業者団体
 サ) 退職者の団体(OB会など)
 シ) シルバー人材センターなどの生産・就業組織

(B) 参加している活動
 ア) 趣味(俳句、詩吟、陶芸等)
 イ) 健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)
 ウ) 生産・就業(生きがいのための園芸・飼育、シルバー人材センター等)
 エ) 教育・文化(学習会、子供会の育成、郷土芸能の伝承等)
 オ) 生活環境改善(環境美化、緑化推進、まちづくり等)
 カ) 安全管理(交通安全、防犯・防災等)
 キ) 福祉・保健(在宅老人の介護・家事援助、施設訪問、食生活の改善等)
 ク) 地域行事(祭りなどの地域の催しものの世話役等)

(2)調査方法

調査I 調査員による面接聴取法により実施
調査II 郵送法により実施

(3)調査事項

 ア) 調査対象者の基本属性に関する事項
 イ) 地域社会に参加するための環境に関する事項
 ウ) 社会参加活動についての実態と意識に関する事項
 エ) 地域奉仕活動についての考え方に関する事項
 オ) 世代間交流についての実態と意識に関する事項

(4)調査実施時期

調査I 平成10年1月29日~2月8日
調査II 平成10年2月6日~2月27日

(5)標本選定方法、標本数及び有効回収数

  調査I(住民調査) 調査II(活動者調査)
標本選定方法 層化二段無作為抽出法 市区町村社会福祉協議会による選定(調査Iと同地区)
標本数 3,000人 2,799人
有効回収数(率) 2,303人(76.8%) 2,302人(82.2%)

3 有効回答者の性別等

(1)性別、年齢階級別構成
  総数 性別 年齢階級別
不明 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80歳以上 不明
住民調査 平成10年 2,303人
100.0%
1,069人
46.4%
1,234人
53.6%
-
-
704人
30.6%
646人
28.1%
505人
21.9%
267人
11.6%
181人
7.9%
-
-
平成5年 2,385人
100.0%
1,097人
46.0%
1,288人
54.0%
-
-
774人
32.5%
679人
28.5%
494人
20.7%
298人
12.5%
140人
5.9%
-
-
昭和63年 2,451人
100.0%
1,109人
45.2%
1,342人
54.8%
-
-
832人
33.9%
613人
25.0%
509人
20.8%
319人
13.0%
178人
7.3%
-
-
活動者調査 平成10年 2,302人
100.0%
1,414人
61.4%
888人
38.6%
-
-
359人
15.6%
572人
24.8%
702人
30.5%
449人
19.5%
216人
9.4%
4人
0.2%
平成5年 2,539人
100.0%
1,649人
64.9%
883人
34.8%
7人
0.3%
403人
15.9%
673人
26.5%
633人
24.9%
512人
20.2%
305人
12.0%
13人
0.5%
昭和63年 2,312人
100.0%
1,611人
69.7%
679人
29.4%
22人
1.0%
424人
18.3%
534人
23.1%
602人
26.0%
507人
21.9%
238人
10.3%
7人
0.3%

(2)同居形態
  総数 単身世帯 夫婦二人
世帯
本人と子の
世帯
本人と子と
孫の世帯
その他
住民調査 平成10年 2,303人
100.0%
211人
9.2%
750人
32.6%
512人
22.2%
631人
27.4%
199人
8.6%
平成5年 2,385人
100.0%
201人
8.4%
653人
27.4%
508人
21.3%
787人
33.0%
236人
9.9%
昭和63年 2,451人
100.0%
238人
9.7%
640人
26.1%
495人
20.2%
780人
31.8%
298人
12.2%
活動者調査 平成10年 2,302人
100.0%
172人
7.5%
936人
40.7%
361人
15.7%
644人
28.0%
189人
8.2%
平成5年 2,539人
100.0%
170人
6.7%
854人
33.6%
370人
14.6%
895人
35.3%
247人
9.8%
昭和63年 2,312人
100.0%
110人
4.8%
792人
34.3%
265人
11.5%
724人
31.3%
421人
18.2%

(3)健康状態(住民調査)
  総数 非常に健康である まあまあ健康である 病気がちである
平成10年 2,303人
100.0%
625人
27.1%
1297人
56.3%
381人
16.5%
平成5年 2,385人
100.0%
591人
24.8%
1,400人
58.7%
394人
16.5%
昭和63年 2,451人
100.0%
626人
25.5%
1,362人
55.6%
463人
18.9%

(4)職業
  総数 有職 無職 不明
農林漁業 商工サービス・自由業 常勤の被傭者 パート・アルバイト 不明
住民調査 平成10年 2,303人
100.0%
227人
9.9%
303人
13.2%
175人
7.6%
165人
7.1%
-
-
1,433人
62.2%
-
-
平成5年 2,385人
100.0%
302人
12.%
293人
12.3%
183人
7.7%
174人
7.3%
-
-
1,433人
60.1%
-
-
昭和63年 2,451人
100.0%
240人
9.8%
268人
10.9%
147人
6.0%
179人
7.3%
-
-
1,617人
66.0%
-
-
活動者調査 平成10年 2,302人
100.0%
245人
10.6%
224人
9.7%
127人
5.5%
55人
2.4%
9人
0.4%
1,544人
67.1%
98人
4.3%
平成5年 2,539人
100.0%
340人
13.4%
369人
14.5%
181人
7.1%
58人
2.3%
17人
0.7%
1,470人
57.9%
104人
4.1%
昭和63年 2,312人
100.0%
211人
9.1%
333人
14.4%
101人
4.4%
95人
4.1%
13人
0.6%
1,432人
61.9%
46人
2.0%

(5)経済的状況
  総数 家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている 家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている 家計にゆとりがなく、多少心配である 家計が苦しく、非常に心配である その他 わからない 不明
住民調査
2,303

20.4

59.1

17.2

3.0

-

0.5

-
活動者調査
2,302

24.0

64.5

8.3

1.0

0.0

0.3

1.8

(6)都市規模
  総数 大都市 中都市 小都市 町村
住民調査 平成10年 2,303人
100.0%
429人
18.6%
745人
32.3%
469人
20.4%
660人
28.7%
平成5年 2,385人
100.0%
394人
16.5%
773人
32.4%
503人
21.1%
715人
30.0%
昭和63年 2,451人
100.0%
421人
17.2%
763人
31.1%
513人
20.9%
754人
30.8%
活動者調査 平成10年 2,302人
100.0%
416人
18.1%
810人
35.2%
481人
20.9%
595人
25.8%
平成5年 2,539人
100.0%
419人
16.5%
840人
33.1%
560人
22.1%
720人
28.4%
昭和63年 2,312人
100.0%
418人
18.1%
746人
32.3%
476人
20.6%
672人
29.1%

注)「大都市」:東京都区部と政令指定都市
 「中都市」:人口10万人以上の市(大都市を除く)
 「小都市」:人口10万人未満の市
 (調査時における規模による)


◇ トピックス◇

【地域社会に参加するための環境】

  1. 近所づきあいの程度は、「親しくつきあっている」が半数以上、その割合は低下傾向

  2. 親しい友人・仲間を「沢山もっている」が3分の1、その割合は低下傾向

  3. 仕事や家事以外での主な過ごしかたは、「テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの見聞き」が約8割

  4. 自由時間、趣味活動などを活発に行うためには、「一緒にする仲間」、「経済的なゆとり」が必要

【社会参加活動についての実態と意識】

  1. この1年間に社会参加活動に参加した者は43.7%、「健康スポーツ」、「趣味」の順

  2. 最も力を入れた活動は、「趣味」、「健康・スポーツ」の順

  3. 最も力を入れた活動の参加頻度は「週に2回以上」(活動者調査では「週に2,3回程度」)が最も高い

  4. 最も力を入れた活動に初めて参加した時期は、「退職(隠居)してから」が最も高い

  5. 最も力を入れた活動に参加したきっかけは、「友人、仲間のすすめ」が最も高い

  6. 活動全体を通じて参加して良かったことは、「新しい友人を得ることができた」が約6割

  7. 活動に参加しなかった理由では、「健康・体力に自信がないから(年をとっているから)」「家庭の事情(病人、家事、仕事)があるから」がそれぞれ3割

  8. 地域活動への参加意向がある者は、半数近く

  9. 今後参加したい活動・高齢者に今後参加してほしい活動は、「健康・スポーツ」が最も高く、「福祉・保健」が大きく上昇

  10. 活動に参加したい理由は、「生活に充実感をもちたいから」が最も高い

  11. 退職者の地域とのかかわり方について、「退職すると地域生活の場となるのだから、積極的に地域活動に目を向けさせる手だてが必要だ」と答えた者の割合は、活動者調査の方が大幅に高い

【地域奉仕活動についての考え方】

  1. 地域活動を進めていく上での環境について、「活動資金の確保」、「リーダー(指導者)の確保」、「活動者の研修・人材の養成」が不十分と答えた者は半数以上

  2. 地域活動への参加を推進する上で、「家庭の理解」、「町内会・老人クラブ等の活動団体自身の活発化」、「高齢者自身の参加意欲の高揚」の役割が「大きい」と答えた者はそれぞれ5割

  3. 実際に地域奉仕活動をするために最も必要な条件は、「一緒に活動する仲間がいること」が約4割

  4. 地域奉仕活動を盛んにするために必要な社会的整備は、「地域奉仕活動の必要性を多くの人に知らせること」が最も高い

  5. 地域奉仕活動運営のための最も望ましい活動資金の確保は、「国、県、市区町村からの補助金」が最も高い

  6. 地域奉仕活動の報酬に対する考え方「地域奉仕活動とはいえ、交通費などの実費ぐらいは受けてもよい」が最も高く、活動者調査の方が10.8ポイント高い

  7. 高齢者による地域奉仕活動への国や地方公共団体のかかわり方は、直接、協力・援助を望んでいる者は、住民調査では約7割、活動者調査では8割以上

  8. 高齢者が地域奉仕活動に参加する上での国や地方公共団体に対する要望は、住民調査では「施設を利用しやすくする」、活動者調査では「指導者の養成、活動者の確保の機会を充実する」が最も高い

  9. ボランテイア時間貯蓄制度注)を知っている者の割合は約5割(活動者調査では8割)

  10. ボランティア時間貯蓄制度を推進すべきであると答えた者が約7割

  11. 地域のための奉仕活動を含めたボランティア活動者への社会的評価について、行ってもよいまたは行うことが望ましいと答えた者は、住民調査では約6割、活動者調査では約7割27社会的評価を行う形としては、「感謝状の授与など、社会的に賞賛する」が住民調査では約7割、活動者調査では約8割

  12. 社会的評価を行うべきではないと思う理由は、「ボランテイア活動は、自分自身が充実感や満足感を得られればそれでよく、他人や社会からの評価を求めるものではないから」が最も高い

【世代間交流についての実態と意識】

  1. 若い世代との交流の機会のある者は約5割(活動者調査は約8割)、その割合は低下傾向

  2. 交流の相手は、「壮年の世代」が約7割

  3. 若い世代との交流への参加意向がある者は、約5割(活動者調査では約9割)

  4. 参加したい若い世代との交流の内容は、「若い世代と一緒に楽しめる活動」が約7割

  5. 若い世代との交流に参加したくない理由としては、「若い世代とは話が合わないと思うから」が約4割

  6. 世代間交流促進のための必要条件としては、「交流機会の設定」(活動者では「世代間交流の世話役的リーダーの存在」)が最も高い

  7. 生きがい(喜びや楽しみ)を感じている者は8割(活動者は9割)以上

  8. 生きがい(喜びや楽しみ)を感じる時としては、「孫など家族との団らんの時」(活動者調査は「社会奉仕や地域活動をしている時」)が最も高い