1 国際調査

1.10 ドイツにおける最終見解発表後の合理的配慮・環境整備の取組

1.10.1 ドイツの包括的な最初の報告の国連審査状況

(1)障害者権利条約の批准と審査状況

 ドイツは、2007年3月に障害者権利条約に署名し、2009年2月24日に批准した。その後、障害者権利委員会への包括的な最初の報告は、2011年9月に提出された。
 障害者権利委員会では、2014年4月に開催された第1回事前作業部会で検討された事前質問事項が2014年4月17日に提示された。これに対する政府回答は、2014年8月29日に提出され、この内容を踏まえ、2015年3月に開催された第13会期においてドイツの包括的な最初の報告の検討が行われた。

(2)最終見解の主な論点

 2015年3月に障害者権利委員会で採択されたドイツ政府に対する最終見解では、主要項目に関し、次のような内容が指摘された。

第5条 平等及び無差別

 障害者権利委員会は、ドイツの法律が合理的配慮の定義を含んでおらず、合理的配慮の否定が差別の一形態と定義されていない点を問題視し、差別に対する保護を法で定め、判例法に関するデータを収集すること、合理的配慮を正式に法律に記し、合理的配慮の否定を差別の一形態として認識し、処罰すべきものであると保証すること、合理的配慮に関する全体的な研修を実施することを勧告した。

第6条 障害のある女子

 障害者権利委員会は、障害のある女子、特に移民、難民への複合的な差別を防止するための取組が不十分であり、関連するデータの収集が不十分であることに対し懸念を表明した。そして、障害のある女子に対するプログラムの実施や、障害のある女子に関する統計を体系的に収集し、次回の定期報告で報告することを勧告した。

第9条 施設及びサービス等の利用の容易さ

 最終見解では、アクセシビリティに関する一般的意見第2号を参照しつつ、あらゆる場面における障害者のアクセシビリティを拡大するための義務、監視、罰則など、目標を定めた措置を導入すること、手話の使用に関して業務を包括的に評価するよう放送機関を奨励することを勧告した。

第12条 法律の前にひとしく認められる権利

 障害者権利委員会は、一般的意見第1号に従い、あらゆる形態の代理意思決定を撤廃し、支援付き意思決定制度に置き換えること、支援付き意思決定の仕組みに対する専門的な品質基準を策定すること、あらゆる主体に対し、条約第12条に関する研修を提供することを勧告した。

第19条 自立した生活及び地域社会への包容

 障害者権利委員会は最終見解で、ドイツにおける施設化の高い割合、代替的な生活施設や適切なインフラの欠如について懸念を表明し、第12次社会支援サービスのための社会規範第13章1項(3)の法的な改正に向けた措置をとること、脱施設化を促進し、自立生活を促進するために、十分な財源を割当てること、地域社会での生活支援プログラムや給付へのアクセスを増やし、障害関連費用の対象とすることを保証するよう勧告した。

第24条 教育

 障害者権利委員会は最終見解で、障害のある学生の多くが隔離された特別支援学校に通う教育制度を有していることに懸念を示した。そして、すべての州で質の高いインクルーシブ教育制度へのアクセスを提供するため、戦略、行動計画、タイムライン、目標を直ちに策定すること、普通学校に障害のある児童を入学させる義務を認めることを法制化し、隔離された学校を縮小すること、すべての教育場面で合理的配慮を提供し、合理的配慮を法的に位置づけ、訴訟で責任を追及できるよう保証すること、普通教育で手話を提供することを求めた。

追加調査

 障害者権利委員会はドイツ政府に対し、追加調査として、障害者権利条約第16条、搾取、暴力及び虐待からの自由について示された第36項の勧告――障害のある女子が効果的に暴力から守られるよう適切な資金を備えた包括的、効果的な戦略を提供すること。また、独立機関を設立・指定し、施設に関する苦情申立てを独立機関で扱うこと――に関し、最終見解後12か月以内に、権利委員会に対し情報を提供することを求めた。

 以上のような最初の報告に対する障害者権利委員会による審査を踏まえ、ドイツ政府は、2019年3月24日までに、第2次・第3次合併の定期報告を提出し、その中に最終見解に関する情報を含めることになる。
第2次・第3次の報告は、簡略化された報告手続に則って提出される。このため、障害者権利委員会は、2018年8月から開催される第20会期障害者権利委員会において、簡略化された報告手続に基づく事前質問事項を示す予定である。この事前質問事項への締約国の回答が、第2次・第3次定期報告の構成要素となる。

(3)最終見解の合理的配慮・環境整備に関する施策の状況

 ドイツでは、2011年6月に「国連障害者権利条約のための国内行動計画(NAP)」が連邦政府において成立していた。しかし、2015年3月に障害者権利委員会から最終見解が提示されたことを受け、第18次立法機関任期に関する連立協定において、障害者や障害者団体の参加のもと、国連障害者権利条約のための国内行動計画(NAP)の一層の徹底化についての合意がなされた。この徹底化の過程は、2016年6月28日の内閣での「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」の成立に帰結した。
 参考資料10-3に、「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」の要約を掲載した。ここで報告されている内容によると、NAP 2.0は、NAP 2.0が内閣で採択された後に出された対策も含めて242件において、第1次国内行動計画を補完するものとなった。法や規則の本質的な改正は34件行われた。大きなものとしては、連邦参加法(BTHG)による統合扶助51の改革、社会法典第9編(SGB IX)で予定されている大幅な改正、障害者平等法(BGG)の拡充などである。
 また、NAP 2.0の策定にあたっては、連邦政府のすべての省庁が議論に参加したことで、政策部門横断的なアプローチをさらに強化し、障害者政策を主流化する理念がより良く考慮されるようになったとも述べられている。この点は、第1次国内行動計画と比べ、対策が各省庁により均一に配分されている点にも反映されている。第1次国内行動計画では連邦労働・社会省だけで対策の40%近くについて責任を負っていた。しかし、NAP 2.0では対策のおよそ45%について、社会関係省庁(BMG(連邦健康省)、BMFSFJ(連邦家族・高齢者・女性・青少年省)、BMAS(連邦労働・社会省))が責任を持ち、残りの45%に関しては、その他の省が対策を管轄する。およそ10%の対策は横断的な取組であり、複数省庁あるいは州政府、その他の活動主体が参加している。

(4)新たな取組と最終見解との関係性

 ここでは、ドイツ国内における新たな取組と最終見解との関係性について整理する。
 参考資料10-4に、同資料第6章「NAP 2.0の対策の条約委員会の勧告との関係」を掲載した。また、図表10-1に最終見解と第6章「NAP 2.0の対策の条約委員会の勧告との関係」に記載されている事項との対応関係を示した。
 以下、主要条項について、「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」の要約と第6章「NAP 2.0の対策の条約委員会の勧告との関係」に記載されている内容を中心に、その対応状況をまとめる。

第5条 平等及び無差別

 障害者権利条約第5条に関し、最終見解では、合理的配慮の提供を法に記すこと、合理的配慮の否定を差別の一形態として認識すること、合理的配慮に関する体系的な研修を実施することなどが勧告されている。これを受けてドイツ政府は、障害者平等法(BGG)を改正し、複合的な不利益からの保護や、合理的配慮の否定を差別と認識して対応することを明記した。

第9条 施設及びサービス等の利用の容易さ

 第9条に関し最終見解では、アクセシビリティを拡大するための義務、監視、罰則などの措置の導入や、放送機関のアクセシビリティの実施状況の評価に言及していた。
これに対し、「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」第6章においては、ドイツ政府がバリアフリー連邦専門局と調停機関を設立したことが報告されている。

第12条 法律の前にひとしく認められる権利

 障害者権利委員会は最終見解で、代理意思決定を撤廃し支援付き意思決定制度に置き換えること、支援付き意思決定の仕組みに対する品質基準を策定することなどが勧告されている。しかし、これに対するドイツ政府の対応は、「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」においては明記されていない。

第19条 自立した生活及び地域社会への包容

 第19条に関して最終見解では、脱施設化を促進し自立生活を促進するために十分な財源を割り当てること、地域社会における支援を増やすことなどが求められていた。この点については、「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」において、連邦参加法(BTHG)の枠組みで統合扶助を改革し、個人のニーズに基づいたサービスの提供を拡大していることが報告されている。

第24条 教育

 第24条に関しては、最終見解において、インクルーシブ教育制度へのアクセスを提供するための戦略や行動計画を策定すること、普通学校に障害のある児童を入学させる義務を法制化し隔離された学校を縮小すること、普通教育で手話を提供するよう保証することなどが勧告された。これに対しドイツ政府は、早期教育専門家研修の取組(WiFF)、教員教育品質キャンペーン、「空間と包容」プロジェクトを開始したことを「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」にて説明している。これらは、義務教育、高等教育の領域での対策と空間的環境の形成を包容の実現のための重要な前提条件とするプロジェクトであると説明されている。

追加調査

 ドイツ政府は、障害者権利条約第16条、搾取、暴力及び虐待からの自由について示された第36項の勧告――障害のある女子が効果的に暴力から守られるよう適切な資金を備えた包括的、効果的な戦略を提供すること。また、独立機関を設立・指定し、施設に関する苦情申立てを独立機関で扱うこと――に関し、最終見解後12か月以内に、権利委員会に対し情報を提供することが求められていた。
 この点に関してドイツ政府は、2016年4月17日に追加調査情報を報告している。追加調査情報では、最終見解第36項の内容を3つに分割し、追加調査情報の第1部(Part1)では、障害のある女子に対する戦略について各州の状況を報告している。第2部(Part2)では、障害者権利条約第16条3項の独立機関について各州の計画中または既存の独立機関の情報をまとめている。同第3部(Part3)では、施設内における障害者に対する暴力や虐待事件に起因する苦情申立てを扱う既存あるいは計画中の独立組織に関する情報をまとめている。
 提出された追加調査情報を抜粋して翻訳したものを参考資料10-2「最終見解への追加調査に関するドイツからの情報」に掲載した。

図表10-1 最終見解と新たな取組の関係
最終見解 NAP 2.0の対策
第1~4条一般的義務
6.連邦、州、地方機関が条約で定めた権利、義務を認識するよう保証すること。
8.(a)無差別及び人権に基づくモデルへの完全な移行に関する問題において、法律、政策における障害の法的な定義を改正する。
(b)連邦及びすべての地方政府は、権利を促進、保護、履行する適切な措置を講じ、条約の実施を監視するための目標、指標を用いて、明確な障害の概念とともに、中心となる人権に基づく行動計画を策定する。
障害者平等法(BGG)と連邦参加法(BTHG)の改正 – BGGと社会法典第9編(SGB IX)での障害者概念の適正化 (a)
各省庁でのNAP 2.0と行動計画の作成 (b)
10.障害者団体の参加の枠組みを策定すること。また、そのような団体に資源を提供する。 障害者平等法(BGG)の改正 – 障害者の利益を代表する団体の助成と参画
12(a)関連する国内法を条約と調和させる。
(b)すべての新規の法、政策は、条約に従う。
(c)救済措置を組み入れる。
第5条平等及び無差別
14.(a)判例法に関するデータを収集する。
(b)合理的配慮の提供を法に記すこと、合理的配慮の否定を、差別一形態として認識する。
(c)連邦、州、地方レベルで、合理的配慮に関する体系的な研修を実施する。
障害者平等法(BGG)の改正の枠内での複合的な不利益からの保護 (a)
BGGの改正に際して、合理的配慮の否定を差別と認識して対応する (b)
第6条障害のある女子
16.(a)積極的差別是正措置など、障害のある女子に対するプログラムを実施する。
(b) 障害のある女子に関するデータ、統計を体系的に収集し、情報提供する。
障害者の生活環境についての連邦政府の参加報告書 (16b)
第7条障害のある児童
18.(a)障害、年齢に応じた支援を保証し、自身の生活に影響するすべての問題について協議する
(b) 移民・難民の障害のある児童に注意を払い、すべての障害のある児童に配慮する。
2016年から障害のある移民・難民の包容に関する議論を開始
第8条意識の向上
20.(a) 公共・民間メディアの関与を保証し、意識を向上し、差別を撤廃するための戦略を策定する。
(b)研修プログラムを、障害者に関係するすべての職員に提供する。
障害者権利条約についての裁判官の研修 (b)
第9条施設及びサービス等の利用の容易さ
22.(a) あらゆる生活分野における、障害者のアクセシビリティを拡大するため、義務、監視の仕組み、違反に対する効果的な罰則など、目標を定めた効果的な措置を導入する。
(b) アクセシビリティの実施を包括的に評価するよう、公共及び民間の放送機関を奨励する。
バリアフリー連邦専門局の設立と調停機関の設立 (a)
第11条危険な状況及び人道上の緊急事態
24.国にまたがる統一の緊急事態管理センターを設立すること 経済開発省(BMZ)行動計画において検討中
第12条法律の前にひとしく認められる権利
26.(a) 一般的意見第1号に従い、代理意思決定を撤廃し、支援付き意思決定制度に置き換える。
(b)支援付き意思決定の仕組みに対する専門的な品質基準を策定する。
(c)あらゆる主体に対して、第12条に関する研修を提供する。
支援付き意思決定支援に関する調査研究事業
第13条司法手続の利用の機会
28.(a)司法関係機関のアクセシビリティを改善するために、目標を定めた措置を導入する。
(b) 障害者への配慮を保証するため、立法改革を導入する。
(c)司法・警察制度において、効果的な研修を保証する。
2020年までに半数の司法関係者への研修終了 司法文書のデジタル化に関する法案を検討中
第14条身体の自由及び安全
30.(a)本人が同意しない施設入所を禁止し、代替措置を促進するため、法改正する。
(b)精神医学的サービスの審査、プライバシー、関連データを収集する。
連邦参加法(BTHG)による規定
32.(a)犯罪に関与した障害者を処罰するための手続について、構造的な審査を開始する。
(b) 犯罪司法制度における、すべての人の手続保証のため、障害者に平等なアクセスを保証する。
(c)拘置所における合理的配慮を保証する。
刑法典第63条に従った精神病院への入院の権利の改正
34.(a)拷問を正式に廃止するために審査を行う。
(b)高齢者介護施設、障害者施設における、身体的、化学的拘禁の利用を禁止する。
(c)そのような慣行に対する補償を検討する。
連邦司法消費者保護省(BMJV)が調査研究事業実施中
第16条搾取、暴力及び虐待からの自由
36.障害のある女子が効果的に暴力から守られるよう適切な資金を備えた包括的、効果的な戦略を提供すること。また、独立機関を設立・指定し、施設に関する苦情申立てを独立機関で扱うこと。 (追加調査報告に掲載)
第17条個人をそのままの状態で保護すること
38.(a)ドイツ民法第1905章を撤回し、当事者の同意のない不妊手術を禁止する。
(b)精神医学的治療及びサービスが当事者の同意のもと提供されるよう保証する。
(c)すべての州の精神病院、高齢者介護施設における人権侵害を調査する。
(d) 中間的な性別の児童に関し、拷問禁止委員会の勧告をすべて実施する。
精神病学上の支援制度での強制処置の回避のための研究プロジェクト (c)
中間的な性別の人の人権人格権の強化についての各省間連絡作業部会の設立 (d)
第18条移動の自由及び国籍についての権利
40.移民政策を見直し、障害のある移民が支援を利用できるようにすること。また、支援に関する情報を移民の主な母国語で提供すること。 2016年から障害のある移民・難民の包容に関する議論を開始
第19条自立した生活及び地域社会への包容
42.(a) 地域社会での自立生活を可能にする第12次社会支援サービスのための社会規範第13章1項(3)の法改正に向けた措置をとる。
(b) 全国で、知的障害者や心理社会的障害者に必要な支援を提供し、地域社会に基づく外来サービスを提供するための財源の増加など、脱施設化を促進し、自立生活を促進するために十分な財源を割当てる。
(c)地域社会での生活支援プログラム、給付へのアクセスを増やし、障害関連費用の対象とすることを保証する。
連邦参加法(BTHG)の枠内での個人に合わせたサービスの用意 (b)
第23条家庭及び家族の尊重
44.(a)親の障害に基づいて親から児童を引き離すことを明確に禁止するよう法的措置をとる。
(b)親権を行使するための支援、保障の仕組みを障害者が利用できるようにする。
(c)障害のある児童の養成縁組の機会を増やす。
養子縁組機構の拡充 (c)
第24条教育
46.(a)必要な財源、人員など、すべての州で、質の高いインクルーシブ教育制度へのアクセスを提供するため、戦略、行動計画、タイムライン、目標を策定する。
(b) 普通学校に障害のある児童を入学させる義務を認める法律や政策を有効にし、隔離された学校を縮小する。
(c) すべてのレベルの教育で合理的配慮を提供し、合理的配慮の権利を法制化し、司法判断ができるようにする。
(d)インクルーシブ教育についてのすべて教員への研修、教育環境のアクセシビリティの向上など、普通教育で手話を提供するよう保証する。
早期教育専門家研修取組 – WiFF、教員教育品質キャンペーン、プロジェクト「空間と包容」 (d)
第25条健康
48.保健サービスのアクセシビリティのための計画を策定し、資源を割当てる。 企業内のバリアフリーの取組、特にテーマ「バリアフリー診療所」
第27条労働及び雇用
50.(a) 特に障害のある女性に利用可能な職場における雇用機会の創造。
(b) 出口戦略及びタイムライン、労働市場での雇用に対する奨励措置を通じて、福祉的就労を段階的に廃止する。
(c)福祉的就労に結びついている社会保障や年金を減額されないよう保証する。
(d)開かれた労働市場における職場のアクセシビリティに関するデータを収集する。
連邦参加法(BTHG)の枠内での一般労働市場での就労可能性の拡大 (b)
第28条相当な生活水準及び社会的な保障
52.障害者のニーズに応じた自立生活のための個別収入に関する審査を行うこと。また、健常者と同等の生活水準を提供する社会サービスを提供すること。 統合手当ての改革 – 収入算入及び資産算入の改正
第29条政治的及び公的活動への参加
54.障害者の投票権を奪うすべての法律や規則を廃止し、障壁を減らし、適切な支援の仕組みを制定すること。 連邦市民局(BdP)による、政治活動への包容取組
第30条文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加
56.マラケシュ条約の批准、実施など、適切な措置を講じること。 欧州著作権法の改正についての審議の建設的支援とドイツ著作権法の調整についての立案の開始
第31条統計及び資料の収集
58.性別、年齢、障害に分類された体系的なデータを収集し、人権指標を策定すること。 障害者の参加についての標本調査
第32条国際協力
60.(a)国際開発の取組に対する障害者の権利に基づくアプローチ。
(b) 2015年以降の開発アジェンダを実施、監視する適切な障害予算編成を伴う監視及び説明責任の枠組み。
(c)障害者の主流化に関する包括的で統合されたデータベース。権利の実現の進捗を体系的に分析、評価するための基準を導入する。また、すべての開発援助に障害者を包容すること。
開発協力における包容の実現についての連邦経済開発省(BMZ)戦略 (a)
第33条国内における実施及び監視
62.(a)構造を統合整理し、州レベルの中央連絡先、対応機関を正式に指定する。
(b) 障害問題に関する全州委員会の法的地位など、独立して活動する中央連絡先に必要な資源、地位を強化する。
(c)独立した監視の仕組みの能力を強化し、州及び自治体レベルで利用可能な資源を保証する。
ドイツ人権研究所の障害者権利条約の監視についての規則も含めた、ドイツ人権研究所の法的地位と業務についての法的根拠の作成 (c)
追跡調査及び普及
63.12か月以内に第36項で示した委員会の勧告を実施する措置に関する情報の提供を求める。 2016年4月17日に報告を提出。

(4)ドイツの対応に関する考察

 以上、「障害者権利条約のための国内行動計画2.0(NAP 2.0)」を手がかりに、障害者権利委員会の最終見解後のドイツ政府の対応状況をまとめた。この内容からは、ドイツ政府が障害者権利条約を重視して障害者に関する長期計画を立てていることだけでなく、最終見解での指摘に対し多方面にわたる取組を進めていることが分かる。34件に及ぶ法改正や、障害者政策を主流化するための省庁間の分担の見直し、調停機関の設立など、法制度の根本的な部分で大規模な改革が進められている。
 一方、個々のテーマに関するドイツ政府の対応を整理すると、必ずしも最終見解が示した内容に逐一対応しているわけではないことが分かる。特に、社会関係省庁(BMG(連邦健康省)、BMFSFJ(連邦家族・高齢者・女性・青少年省)、BMAS(連邦労働・社会省))以外の省庁が見直しを担う項目について、調査研究事業が進行中であるという記述が多くみられた点は、印象的である。今後、ドイツ政府から提出される第2次・第3次政府報告において、これらのテーマについてどのような報告がなされるかが注目される。


51 統合扶助(Eingliederungshilfe)(SGB XII53-60 条)とは、障害者の社会生活への「統合」を志向するものであり、社会参加給付の他にも、適切な学校教育に対する援助や、雇用の場における援助、医師による給付、労働生活への障害者の参加の保障に対する事後の援助、などを含む(SGB XII 54 条)。(参照:森周子「ドイツにおける障害者福祉の現状と課題--介護給付と社会参加給付を中心に」)

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