IV.障害者を捉える設問に関する調査 IV-3

3.調査の方法

1)調査の体系

 障害者を捉える設問に関して検討を行うことを目的として、インターネット調査及び紙面調査を実施した。また、これについて補足的な情報を得るためにグループインタビューを実施した。

2)個々の調査方法の概要

(1)インターネット調査

 本調査研究でのインターネット調査は、企業等が有するインターネットモニターに対して、Web画面上でアンケート調査を実施する調査手法により行った。このため、モニターとして登録した者のみを対象としているという特徴がある。
 本インターネット調査は、調査受託会社である野村総合研究所が提供するインターネットリサーチサービスであるTrueNavi(https://truenavi.net/index.html)を用いて実施した。
 同サービスのモニターは令和2年3月2日時点で650,750人13である。主要な属性別でみると、以下のようになっている。

【性別】 男性(49.6%)、女性(50.4%)
【年齢層】
割合は全モニターにおける割合
20歳未満:男性(1.2%)、女性(1.6%)
20代:男性(4.4%)、女性(8.7%)
30代:男性(8.2%)、女性(14.1%)
40代:男性(12.1%)、女性(13.0%)
50代:男性(12.3%)、女性(8.5%)
60代以上:男性(11.4%)、女性(4.5%)
<1>目的

 障害者を捉える設問について、集計結果の妥当性の評価、適切に回答できるかの評価を実施するために、必要なデータを迅速かつ大量に収集することができるインターネット調査を実施した。

<2>調査項目

 主な調査項目として、以下を質問した。

  • 基本属性
  • 障害者を捉える設問及びその評価
  • 日常生活、公的な障害者関連制度等の利用の状況
  • 雇用、労働等の状況
  • その他(グループインタビューへの参加希望)
<3>スケジュール

 インターネット調査は、以下のスケジュールで実施した。

図表 12 インターネット調査のスケジュール
実施時期 実施内容
令和元年12月20日(金) 調査項目の確定
令和2年1月14日(火) インターネット画面の確定
令和2年1月15日(水)~2020年1月24日(金) 実査1
令和2年2月21日(金)~2020年2月26日(水) 実査2
令和2年2月下旬 集計・分析
<4>サンプル抽出フロー

 インターネット調査における、集計サンプルは以下のようなフローに基づいて抽出した。(実際の本フローにおけるサンプルはp32を参照)
 まず、予備調査を実施し、回答者本人の公的障害者関連制度の利用有無14、同居家族の公的障害者関連制度の利用有無を把握した。その後、より詳細な調査(ここでは「本調査」と表記する)への回答を依頼した。
 調査対象を抽出するにあたっては、以下の3つのステップで分類した。
 1つ目の分岐(分岐1)として、「本調査」への回答の有無で分けた。このうち、「本調査」への回答が無かった者は最終的な集計対象とはならない15
 続いて、2つ目の分岐(分岐2)として、本人の公的障害者制度の利用有無で分けた。
 本人の公的障害者制度の利用がある者は、そのまま「本調査」に回答した。
 最後に、3つ目の分岐(分岐3)として、同居人の公的障害者制度の利用の有無によって分けた。同居人の公的障害者制度利用がない者は、そのまま本人について「本調査」に回答した。同居人の公的障害者制度の利用がある者は、同居人について「本調査」に回答したため、本人についての回答はなく、集計には含めなかった。

図表 13 インターネット調査における集計サンプルの抽出フロー図表 13のテキスト版

(2)紙面調査

<1>目的

 障害当事者の追加的なサンプルの収集、及びインターネット調査では捕捉しづらい可能性のある多様な障害当事者のサンプルの確保を目的として紙面調査を実施した。

<2>調査項目

 インターネット調査と同様に以下の項目を質問した。

  • 基本属性
  • 障害者を捉える設問及びその評価
  • 日常生活、公的な障害者関連制度等の利用の状況
  • 雇用、労働等の状況
<3>スケジュール

 紙面調査は、障害当事者団体の協力を得て、次のスケジュールで実施した。

図表 14 紙面調査のスケジュール
実施時期 実施内容
令和元年12月中旬 ご協力団体担当者へ依頼
令和2年1月 郵送またはメールにて調査票を送付
令和2年2月上旬 ご回答期限
<4>実施方法とご協力団体一覧

 令和元年12月における障害者政策委員会において、内閣府より、以下の当事者団体に、調査への協力依頼を実施した。
 同委員会終了後、野村総合研究所より、各当事者団体にメール・お電話等にて個別に調査趣旨等や具体的なオペレーション等をお伝えし、各当事者団体の状況やご希望をお伺いした。
 基本的には、各当事者団体において、概ね10~20名程度の障害当事者のご協力者リストを作成いただいた。ご協力者リストの作成においては、当然ながら各当事者団体により事情が異なり、実施・回答への期間が短かったことから、可能な範囲での対応をいただくこととした。
 原則的には、期待する回答数のみを示させていただき、どのような属性に留意して配布すればよいのかと問い合わせがあった当事者団体の方には、性別・年齢階層別にある程度のサンプルを確保していただけるようなリストアップ・配布への協力をお願いした。
 野村総合研究所から、各当事者団体に対して、各当事者団体から要請いただいた部数の調査票・もしくは回答用ファイルを送付させていただき、各当事者団体から、ご協力者となる障害当事者様・ご家族の方に調査票を送付いただいた。
 また、野村総合研究所に対して配布先の方のリストを作成・提供いただいた当事者団体もあり、その場合には野村総合研究所から直接に調査票あるいはその電子ファイルを送付した。
 調査票の回収に関しては、各当事者団体がまとめて野村総合研究所に送ってくださる場合もあれば、回答者である障害当事者様・ご家族の方から直接野村総合研究所に郵送、もしくはメール添付にての送付をしていただいた場合もある。

図表 15 ご協力いただいた団体名
団体名(50音順)
(一社)全国肢体不自由児者父母の会連合会 (一財)全日本ろうあ連盟
(福)全国重症心身障害児(者)を守る会 (特非)DPI日本会議
(公社)全国精神保健福祉会連合会 (福)日本視覚障害者団体連合
(公社)全国脊髄損傷者連合会 (福)日本身体障害者団体連合会
全国手をつなぐ育成会連合会 (一社)日本難病・疾病団体協議会
(福)全国盲ろう者協会 (一社)日本発達障害ネットワーク
<5>情報保障を目的とした合理的配慮の提供について

 調査票作成に際しては、各当事者団体との調整に基づき、ルビ振り、フォントサイズの拡大(20pts。回答者様からの個別のリクエストに対応)、ファイルのテキスト化(読み上げソフトご利用の方向け)、点字調査票の作成等、合理的配慮の提供を図った。

(3)グループインタビュー

<1>目的

 インターネット調査や紙面調査では入手しにくい情報を収集するため、対象者とその場で双方向に議論できるグループインタビューを実施した。グループインタビューであれば、以下のような情報を収集できる可能性がある。

  • 司会者が回答者の回答について、より深く踏み込んだ質問をしたり、例えば問題点の解決策等を挙げてもらうこと
  • 回答者同士が相互の意見を聞き、自分では思いつかなかった理由に気づいたり、他人の意見を聞いた上で自分は賛成/反対なのかを述べられること
<2>調査項目
  • 3つの設問に対する評価
  • 回答を回避したくなるような表現の有無
  • 統計調査に対する要望(統計の整備等を目的として、公的主体が調査を実施する場合に、どのような内容の把握や配慮を求めるか)
<3>スケジュール

 インターネット調査の回答者の中から、グループインタビューへの参加希望者を募り、参加希望者のスケジュール及び会場の確保可能性の確認を行い、4グループを対象に実査を行った。

図表 16 グループインタビューのスケジュール
実施時期 実施内容
令和2年1月下旬 参加希望者への連絡
令和2年1月29日(水)~令和2年2月2日(日) インタビューの実施(計4回)
令和2年2月上旬 把握された意見の整理・分析
<4>当日の流れ

 当日は以下の流れに沿い、司会から参加者へ質問を投げかけ、意見を収集した。

図表 17 グループインタビュー当日の流れ
調査項目 詳細 時間
趣旨説明・アイスブレイク ・家族構成や趣味 15分
3つの設問の評価 ・各パターンの順位と理由
・良い点・悪い点・改善案
40分
回答を回避したくなるような表現の有無 ・不快だと感じる設問の有無と理由
・障害に関する事項の回答に対する忌避感
10分
統計調査に対する要望 ・統計調査への要望、改善点 5分
<5>実施状況

 以下の日程、場所で実施した。

図表 18 グループインタビュー参加者・日時・開催場所
参加者 日時 場所
第1回 制度の利用者
(男性7名)
令和2年1月29日(水)
18時30分~20時
インタビュールーム浜松町
第2回 制度の非利用者
(男性7名)
令和2年1月30日(木)
19時~20時30分
NRIオフィス会議室
(大手町フィナンシャルシティグランキューブ)
第3回 制度の利用者
(女性7名)
令和2年2月2日(日)
10時~11時30分
インタビュールーム浜松町
第4回 制度の非利用者
(女性6名)
令和2年2月2日(日)
13時~14時30分
インタビュールーム浜松町

13 アクティブ数(過去90日以内にアンケートに回答したモニターと、直近2日以内にマイページにログインしたモニターの数)が650,750人である(令和2年3月2日現在)。
14 予備調査では、<1>身体障害者手帳の所持、<2>療育手帳の所持、<3>精神障害者保健福祉手帳の所持、<4>障害年金の受給、<5>障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給、の5つについて、制度利用有無を把握している(第3回検討チーム会合における議論・その後の構成員への確認を経て上記5つとした)。同居家族に係る質問についても同様である。
15 公的障害者制度の非利用者の中には、予備調査と本調査の実施が異なる時点であったため、一部、本調査にご回答いただけない者がいた。

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