第1章 高齢化の状況(第3節 1-6)

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第3節 国際比較調査に見る日本の高齢者の生活と意識の特徴(6)

6 まとめ

令和2年度調査では、新型コロナウイルス感染症が世界レベルでまん延する中、前回の平成27年度調査と比較すると減少傾向にはあるものの、依然として、各国の60歳以上の人の8割超が現在の生活に満足していると回答している。

一方、新型コロナウイルス感染症の拡大は、各国の高齢者の生活に様々な影響を与えている。

就労についてみると、収入を伴う仕事をしている各国の60歳以上の人のうち、日本、アメリカ、ドイツの約3割、スウェーデンの約1割が、新型コロナウイルス感染症の拡大により、「仕事をする日数や時間数が減った」と回答している。

こうした中、平成27年度調査結果と同様に、日本を除く各国の60歳以上の人の6割以上が「収入を伴う仕事はしたくない」と回答する一方、日本の60歳以上の人の4割は「収入の伴う仕事をしたい」と回答しており、コロナ禍においても、依然として日本の高齢者の就労意欲の高さが表れている。今後とも我が国において高齢化の進行が見込まれる中、高齢者に対して、多様なニーズに対応した就業機会の提供を図るとともに、テレワークの一層の推進などコロナ禍で感染防止をしながら就労が継続できる取組が求められる(トピックス1参照)。

次に、ボランティア活動や、友人・知人との交流等についてみる。

ボランティア活動に参加している各国の60歳以上の人のうち、アメリカの約7割、スウェーデンの約5割、ドイツの約3割、日本の約2割が新型コロナウイルス感染症の拡大により、「ボランティア活動をやめた(中止になった)」又は「ボランティア活動をする日数や時間数が減った」と回答している。

また、友人・知人との交流等についてみると、新型コロナウイルス感染症の拡大により、各国の60歳以上の人からは、「旅行や買い物などで外出することが減った」、「友人・知人や近所付き合いが減った」、「別居している家族と会う機会が減った」、「メール、電話、オンラインでの連絡が増えた」と回答する割合が高く、日本も同様の結果となっている。感染防止のための外出自粛等の結果、各国ともに、高齢者と社会や家族・人とのつながりが減っていることが浮かび上がっている。

さらに、日本では高齢化が進み60歳以上のいる世帯構成は単独世帯が増加傾向にあり、平成30(2018)年では世帯全体の3割弱を占めている。こうした中、平成27年度調査結果と同様に、日本は近所の人との付き合いについて、「相談ごとがあった時、相談をしたり、相談されたりする」、「病気の時に助け合う」と回答する割合が、他国と比較して最も低い水準となっており、また、家族以外の人で、相談し合ったり、世話をし合ったりする親しい友人がいない割合は最も高い水準となっている。

政府としては、新型コロナウイルス感染症による影響が長引く中、令和3年2月、内閣官房に孤独・孤立対策担当室が設置され、政府一体となって孤独・孤立の対策に取り組む体制が整えられたが、高齢者が望まない孤独に陥らないようにしたり、地域社会から孤立しないよう、ICTの利活用促進など感染防止に配慮しつつ、社会活動の参加を促す取組や見守りの支援の推進が求められる(トピックス3トピックス4参照)。

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