第1章 高齢化の状況(第3節 3)
第3節 〈特集〉高齢者の健康をめぐる動向について(3)
3 考察
今回の特集では、高齢者の健康状態、健康についての心がけ、社会活動への参加、生きがいなどに着目し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による高齢者へのコミュニケーションへの影響やインターネットの活用などについて、他の調査のデータも活用しつつ分析を行った。
(1) 高齢者の健康について
この1年間に社会活動へ参加した人は、健康状態が「良い」と回答した割合が高くなっている一方で、社会活動に参加したいと思わない理由で最も多いのが「健康・体力に自信がないから」であり、社会活動に参加してよかったこととして「健康や体力に自信がついた」の割合が高くなっていることと併せると、健康状態が良いことが社会活動への参加につながる可能性があり、また、社会活動に参加することで、健康・体力に自信がつき、更なる参加につながるという好循環を生み出すことも可能であると考えられる。
他方、若いときから健康を心がけている人は、健康状態が「良い」と回答した割合が高くなっていることから、高齢者になる前から自らの健康に関心を持つことも健康につながる可能性がある。
さらに、健康状態と生きがいは非常に強い相関関係があることから、社会参加活動により、健康や体力に自信がつき、それが生きがいにつながることも考えられる。
(2) コロナ禍の影響による高齢者のコミュニケーションの変化について
コロナ禍で外出が制限される中、コロナ禍により、人と直接会ってコミュニケーションをとることが「減った」と回答した割合が6割を超えている。一方、直接会ってコミュニケーションをとることが減った人のうち、約3割が直接会わずにコミュニケーションをとることが「増えた」と回答しており、コロナ禍が高齢者による非対面のコミュニケーションのきっかけとなっていると考えられる。
また、コロナ禍前の平成29年度と比較して、医療機関や病気等の情報をインターネットで調べる高齢者が大きく増加し、平成22年度以降「携帯電話・スマホで家族・友人などと連絡をとる」「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」と回答した割合が、次第に高くなっているなど、高齢者のインターネットによる情報収集や、情報機器を利用し友人と連絡をとることなどに対する意識の変化も見られ、コロナ禍が契機となり、高齢者のインターネットを活用した社会活動につながる可能性も考えられる。
(3) まとめ
今後、加齢に伴う心身機能や認知機能の低下を予防し、健康寿命の延伸を実現するため、高齢者の社会参加活動を促進する取組や、その一環として、情報機器の使い方が分からずに使いこなせていない高齢者や必要性を感じられない高齢者を対象としたデジタルデバイドを解消する取組をより一層推進していく必要がある(支援等の例:参考1は総務省の事例、参考2はデジタル庁の事例)。
例えば、トピックスの事例のように、高齢者の社会参加活動が健康や生きがいを生み出し、それが更なる活動につながり、コミュニティづくりにも貢献するという健康の好循環の実現が図られるよう、各地域の実情に応じて取り組むことが期待される。
<トピックス>
高齢者の健康づくりのための活動が、生きがいや更なる社会参加につながり、コミュニティの活性化にも貢献し得る事例がある(事例1)。
一方、高齢者のインターネットを活用した社会参加活動としては、SNSを活用してコロナ禍においても高齢者の「通いの場」の活動を継続しているものがある(事例2)。
また、高齢者になる前から自らの健康に関心を持ってもらうため、ビッグデータを活用して個々人の将来の生活習慣病・認知症の発症を予測し、生活習慣の改善につなげてもらおうとする取組もある(事例3)。
さらに、インターネットを活用して、高齢者の生活全般の利便性を高め、健康の好循環を生み出そうとするまちづくりが行われてきている(事例4、5)。
政府としては、各地域の取組を後押しし、生涯にわたって生きがいを感じて健康に暮らせるよう取り組んでいくことが重要であると考えている。