ステップ3 特定事業の評価・選定、公表

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本ステップで地方公共団体が実施すること

1. 財政負担の見込額の検討

対象事業に関し、地方公共団体が直接実施する場合とPFIを導入する場合について、事業期間を通じて発生する財政支出を算定し、これを現在価値に換算して比較します。

2. サービス水準の評価

対象事業にPFIを導入して実施することで、サービス水準が維持されるのか、向上するのか検討します。定量化が困難な場合には、客観性を確保した上で定性的な評価を行うこととなります。

3. 特定事業の選定、公表

これまでに行った各種検討結果、市場調査結果、VFM等を勘案し、対象事業にPFIを導入するか否かを判断します。PFIを導入することとなった場合、その結果を特定事業の選定として公表します。

4. 特定事業の選定に用いた詳細資料の公表

特定事業の選定に際して用いた詳細資料については、事業実施への影響に配慮しつつ、適切な時期に公表します。

Q3-1:割引率とは何ですか。

Answer

財政負担の見込額の算定(地方公共団体が直接実施する場合とPFIを導入する場合)に当たっては、現在価値にて比較することが求められます。割引率とは、支出または歳入する時点が異なる金額について、これらを比較するために現在価値に換算する際に用いるものです。具体的には、割引率をrとした場合、来年の100円は、今年の100/(1+r)円の価値に等しくなり、これが「来年の100円」の現在価値です。

例えば、割引率を4%とすると「来年100円」の現在価値は96.15円となります。96.15円を4%で運用すれば、1年後に100円となるという関係です。

割引率の設定方法については、「VFM(Value For Money)に関するガイドライン(平成13年7月27日 内閣府PFI推進委員会)」にもあるように、リスクフリーレートを用いることが適当です。例えば、長期国債利回りの過去の平均や長期見通し等を用いる方法です。

「先行事例の紹介」で採用されている割引率を示します。

採用割引率 事例数
4.00% 5件
3.35% 1件
3.20% 1件
3.00% 6件
2.58% 1件
2.55% 1件
2.00% 2件
1.60% 1件
非公表 2件
合計 20件

また、割引率が一定(例えば4%)であっても、資金の流入時期の違い(先回収型、後回収型)により、現在価値は次のように変化します。

(計算例:1,200円を第1期に投資 2~4期で回収。)

計算例:1,200円を第1期に投資 2~4期で回収。

また、資金の流入時期と金額が同一であっても、割引率が変化することにより「回収の現在価値」も変化します。上記の【先回収型】を例にとると、割引率が以下のように変化した場合、現在価値は次のように変化します。

投資 回収 NPV(注)
第1期 第2期 第3期 第4期 合計
割引なし(実額) 1,200 500 400 300 1,200 0
割引率 4% 1,200 481 370 267 1,117 ▲83
割引率 3% 1,200 485 377 275 1,137 ▲63
割引率 2% 1,200 490 384 283 1,157 ▲43

(注)NPVとは投資の現在価値と回収の現在価値の差

Q3-2:リスク調整費はどのように算定するのですか。

Answer

「先行事例の紹介」で得られた、リスク調整費の算定方法や結果に関する情報を示します。先行事例では、様々な手法によりリスク調整費を算定している事例と、リスク調整費を考慮せずにVFMを算定している事例があります。

事業名 リスク調整費の算定方法
多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(東京都) 都の金銭的負担を算出できるリスクとして、施設が火災等により毀損される場合のリスク等を対象とした。
四日市市立小中学校施設整備事業 (算定せず)
新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業(岡山県) 事業者に移転されるリスクの額は約110百万円となった。
とがやま温泉施設整備事業(八鹿町) リスク調整コストは175百万円となった。
「豊川宝飯衛生組合斎場会館(仮称)」整備運営事業 (算定せず)
(仮称)松森工場関連市民利用施設整備事業(仙台市) 施設の損傷リスク等を含む主要なものについて、定量化した。
PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業(山形県) (算定せず)
(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業 (算定せず)
桑名市図書館等複合公共施設特定事業 定量化が可能なものについて定量化し、市の財政負担の3%となった。
鯖江駅周辺駐車場整備事業 設計変更等による工期延期に伴う開業遅延による収入不足と運営段階における収入変動リスク移転額とした。
寒川浄水場排水処理施設更新等事業(神奈川県) リスクを定量化すると、建設期間及び維持管理・運営期間を通じて、総額409百万円となった。
指宿地域交流施設整備等事業 (算定せず)

リスク調整費の算定を行う際には、「VFM(Value For Money)に関するガイドライン(平成13年7月27日内閣府PFI推進委員会)」の9~10ページを参考にすることが有効です。

一例として、あるリスクの特性に基づくリスク調整費の算定例を示します。

あるリスクの特性 リスクによって財政負担が発生する確率 1% 5% 10%
その場合に想定される財政負担の額 300百万円 100百万円 30百万円
3百万円 5百万円 3百万円
リスク調整費(積和) 11百万円

Q3-3:民間の資金調達コストについては、どのように設定していますか。

Answer

PFIを導入する場合の財政負担の見込額を算定するには、選定事業者の資金調達コストについても設定する必要があります。

選定事業者に対して金融機関が融資を行う際の金利は、一般的に、基準金利に利ざや分を上乗せしたものと解釈することができるため、これらの双方を設定することになります。基準金利は、金融機関の間で融通しあう金利(東京銀行間取引金利(TIBOR)など)が用いられます。利ざや分は、金融機関が必要とする経費や利益、当該事業計画の信用度、融資期間等によって定まるものです。

貸出金利=基準金利+利ざや

基準金利は、金融機関やコンサルタント等が有する過去のデータをよりどころとして設定することは可能ですが、利ざや分については、金融機関が個別事業のリスクをどう評価するかにもよるため、予測することは困難です。

なお、「国土交通省所管事業を対象としたVFM(バリュー・フォー・マネー)簡易シミュレーション第2次検討(平成17年2月21日国土交通省)」では、この利ざや分について、比較的リスクの高いもの2.0%、中程度のもの1.5%、低いもの1.0%と設定しています。リスクの程度については、コンサルタント等の経験や市場調査などを参考に設定することが考えられます。

Q3-4:PFIのLCCを算定する際に、民間事業者の採算についてはどのように見込んでいますか。

Answer

「国土交通省所管事業を対象としたVFM(Value For Money)簡易シミュレーション第1次検討」では、PFI事業の事業性評価として、次を最低基準として設定しています。ただし、実際の事業の検討に当たっては、個別事業ごとに、より適切な基準値を設定する必要があるとしています。

  1. PIRR資金調達コスト+αであること
  2. EIRRが出資者の投資判断基準を上回っていること
  3. DSCR事業期間中各年の値が少なくとも1.0より大きいこと
  4. 運転借入金が発生していないこと

Q3-5:SPCに課される税金には、何がありますか。

Answer

PFIを導入する場合の財政負担の見込額を算定するには、SPCが納める税金についても検討する必要があります。

現行の税制度におけるSPCの主な税負担は、次のとおりです。

税制 PFI 従来型
(地方公共団体)
BOT BTO
登録免許税(国税) 商業登記
不動産登記
課税
課税
課税
非課税
非課税
非課税
不動産取得税(都道府県税) 課税/特例措置あり 非課税1 非課税
固定資産税(市町村税) 課税/特例措置あり 非課税 非課税
都市計画税(市町村税) 課税/特例措置あり 非課税 非課税
事業所税(市町村税) 課税 課税 非課税

1 県税事務所の確認を経て、「選定事業者が施設を原始取得し、新築未使用で地方公共団体に譲渡することで不動産取得税が課税されない。」こととしている事例があります。

上記のほか、SPCも民間企業であるため、利益に対しては法人税(法人住民税、法人事業税を含む)が課されます。
初期投資関連費用に関して、この法人税の課税対象額から控除される経費については、BTO方式では、SPCが建設会社に対して支払う請負工事費等の総額が割賦原価として計上できます。
BOT方式については、平成14年12月に「売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)」として国税庁の見解が示され、必要な条件を満たす場合には、BTO方式と同様に、BOT方式でも、請負工事費等の総額を経費として計上できることが明確になっています。

なお、地方公共団体が実施するPFI事業については、現在、次のような税制特例措置が認められています。

(1)不動産取得税

  1. PFI法に基づき、選定事業者が選定事業(いわゆるサービス購入型・BOT方式で、地方公共団体が法律の規定によりその事業等として実施するものに限る。)により整備する一定の家屋に係る不動産取得税について、当該家屋の価格の1/2に相当する額を価格から控除する課税標準を適用する。(地方税法附則第11条第25項)
  2. PFI法に基づき、選定事業者が港湾法に規定する無利子貸付けを受けて整備する特定用途港湾施設のうち、輸出入に係るコンテナ荷さばきを行うための家屋に係る不動産取得税について、当該家屋の価格の1/2に相当する額を価格から控除する課税標準を適用する。(地方税法附則第11条第26項)
  3. PFI法に基づき、選定事業者が政府補助を受けて整備する一般廃棄物処理施設の用に供する家屋に係る不動産取得税について、当該家屋の価格の1/2に相当する額を価格から控除する課税標準を適用する。(地方税法附則第11条第27項)

(2)固定資産税及び都市計画税

  1. PFI法に基づき、選定事業者が港湾法に規定する無利子貸付けを受けて整備する特定用途港湾施設のうち、輸出入に係るコンテナ荷さばきを行うための家屋及び償却資産について、固定資産税及び都市計画税の課税標準を価格の1/2にする。(地方税法附則第15条第48項)
  2. PFI法に基づき、選定事業者が政府補助を受けて整備する一般廃棄物処理施設の用に供する家屋及び償却資産について、固定資産税及び都市計画税の課税標準を価格の1/2にする。(地方税法附則第15条第49項)
  3. PFI法に基づき、選定事業者が選定事業(いわゆるサービス購入型・BOT方式で、地方公共団体が法律の規定によりその事業等として実施するものに限る。)により整備する一定の家屋及び償却資産について、固定資産税及び都市計画税の課税標準を価格の1/2にする。(地方税法附則第15条第51項)

(3)特別土地保有税

  1. 公共施設等の建設を行うPFI事業の用に供する土地についての特別土地保有税を非課税とする。(地方税法第586条第2項第1号の27)

Q3-6:VFMを検討する際に、外部委託するモニタリング費用はどの程度見込んでいますか。

Answer

委託する業務の範囲により費用は異なります。したがって、あくまでも参考ですが、先行事例の実績では設計・建設期間で年間600万円~1,000万円程度、運営期間で年間200万円~700万円程度となっているようです。

具体的に費用を設定する際には、モニタリングの実施計画(モニタリング内容、地方公共団体と委託先の役割分担)を策定し、コンサルタント等から参考見積りを求めることが有効です。

Q3-7:PFI事業によって達成できた公共サービスの質の向上には、具体的にどのようなものがありますか。

Answer

「先行事例の紹介」で得られた、公共サービスの質の向上に関する情報を示します。PFI事業では、このような工夫が行われることにより公共サービスの質の向上が実現されています。

事業名 公共サービスの質の向上
多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(東京都) 宿泊施設の内装など意匠・デザイン的な向上と屋外運動プログラムの優れた提案
四日市市立小中学校施設整備事業 改修が必要な4校の同時整備が可能になり、早期の教育環境改善が実現
新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業(岡山県) 独自の耐震補強工法が提案され、施設内部の平面計画の自由度や延床面積が増加
留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場PFI事業 24時間遠隔監視センターの設置が提案され、施設の状況の常時監視を実現
とがやま温泉施設整備事業(八鹿町) ユニバーサルデザインやバリアフリーの観点を取り入れ
山陽町新型ケアハウス整備事業 隣接する既存の施設との連携を柱とした、老人福祉の拠点ゾーンとしての地区運営を提案
八雲村学校給食センター施設整備事業 試食スペースや展示スペースの提案
市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業 各施設の分棟を想定していたのに対し、合築による一体整備を提案
鯖江駅周辺駐車場整備事業 車両入出ゲートの24時間遠隔監視料金支払へのプリペイドカード方式の導入
八尾市立病院維持管理・運営事業 病院給食のメニュー選択式の実現、地域医療連携の強化
指宿地域交流施設整備等事業 パンの販売コーナーやそば茶屋の自主提案

Q3-8:特定事業の選定時に、VFMはどのように公表していますか。

Answer

「先行事例の紹介」で得られた、特定事業の選定時におけるVFMの公表方法に関する情報を示します。

事業名 公表方法
多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(東京都) VFMの割合(PSC比)を公表
四日市市立小中学校施設整備事業 VFMの割合(PSC比)を公表
新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業(岡山県) VFMの金額を公表
横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業 VFMの金額を公表
留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業 VFMの金額を公表
とがやま温泉施設整備事業(八鹿町) VFMの金額を公表
山陽町新型ケアハウス整備事業 VFMの割合(PSC比)を公表
八雲村学校給食センター施設整備事業 VFMの割合(PSC比)を公表
「豊川宝飯衛生組合斎場会館(仮称)」整備運営事業 VFMの割合(PSC比)を公表
(仮称)松森工場関連市民利用施設整備事業(仙台市) VFMの割合(PSC比)を公表
PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業(山形県) VFMの割合(PSC比)を公表
(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業 VFMの割合(PSC比)を公表
市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業 VFMの金額を公表
桑名市図書館等複合公共施設特定事業 VFMの割合(PSC比)を公表
鯖江駅周辺駐車場整備事業 VFMの金額を公表
八尾市立病院維持管理・運営事業 VFMの割合(PSC比)を公表
寒川浄水場排水処理施設更新等事業(神奈川県) VFMの金額を公表
指宿地域交流施設整備等事業 VFMの割合(PSC比)を公表
福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業 VFMの割合(PSC比)を公表
橿原市近鉄八木駅前南地下駐車場等施設整備事業 VFMの割合(PSC比)を公表