ステップ5 協定等の締結等

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本ステップで地方公共団体が実施すること

1. 事業契約書の協議

地方公共団体と選定事業者(SPC)が締結する事業契約書について、条文の明確化などの必要となる協議を行います。

2. 事業契約書の締結

上記の協議を経て、地方公共団体と選定事業者(SPC)は事業契約書を締結します。締結に当たっては、PFI事業では、原則として議会承認が必要になるため、仮契約を締結することになります。

3. 直接協定の締結

必要に応じ、地方公共団体は選定事業者(SPC)に融資する金融機関と直接協定を締結します。

Q5-1:契約協議はどのように進めていますか。

Answer

進め方は様々なので、コンサルタント、弁護士等の意見を参考にしながら、地方公共団体と選定事業者で決めることとなりますが、以下に一例を示します。

契約協議の進め方(一例)

Q5-2:契約書案として提示した内容を修正することは可能でしょうか。

Answer

「PFI事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて(平成15年3月31日総行行43号、総行地44号)」では、円滑な事業実施のために必要と認められる場合には、契約書案の内容を適宜修正して公表することが可能となっています。

「PFI事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて(平成15年3月31日総行行43号、総行行44号)」の抜粋
(2)入札前の事業の実施方針、契約書案等の変更等について

(前略)
「PFI事業実施プロセスに関するガイドライン」においては、民間事業者の募集に当たり、発注者の意図が応募者に的確に伝わるように、契約書案の添付又は入札説明書等において契約条件の基本的な考え方をできる限り具体的に示すことが必要であるとされており、また発注者と民間事業者との間で考え方の齟齬を来さないように、可能な限り複数回の質問・回答の機会を設けることが望ましいとされている。

発注者においては、質問・回答等の機会において提示される民間事業者の意見に耳を傾けつつ、円滑な事業実施のために必要と認められる場合には、契約書案、入札説明書等の内容についての適宜の修正や変更を行い、民間事業者に対して公表することとする。修正や変更に際しては、民間事業者が検討を行うために必要な時間を確保することに留意する。
(後略)

Q5-3:契約議案はどのように作成していますか。

Answer

契約議案の一例を示します。
議案○○号
   ○○事業契約について
 下記の事業契約を締結するため、○○条例の規定により、議会の議決を求める。

  平成○年○月○日提出
                                   ○○(首長名)

                         記

1 契約の目的 
         ○○事業
2 建設予定地
         所在地   ○○
         面積  ○○
3 施設の概要
         構  造  ○○
         延床面積  ○○
         居室数等  ○○
         併設施設  ○○
4 契約金額
         金○○○円
         (内消費税○○円)
5 契約の相手方
         ○○○
6 支出科目等 
         平成○年度 債務負担行為

 提案理由
 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づき、○○事業を行うためのものであります。

Q5-4:落札者グループと基本協定を締結する必要性はあるのでしょうか。

Answer

基本協定を締結することが望ましいといえます。その目的としては、主に次の2つがあります。

(1)契約締結までの双方の準備行為を義務化すること

契約締結までには、公表している契約書案に提案事項を反映させたり、条項の内容を明確化することなどが必要になります。その進め方や期限等を規定します。また、SPCの設立についても規定します。

(2)契約の相手方の同一性を担保すること

先行事例9件のうち山陽町新型ケアハウス整備事業を除く8件では、落札者は応募グループですが、事業契約の相手方は、応募グループが設立するSPCです。したがって、当該入札に基づき契約する事業契約は、相手方が異なります。その同一性を担保する必要があります。なお、各地方公共団体の規則により、落札日から契約日(基本協定)までの期日の定めがある場合がありますので留意する必要があります。

なお、「先行事例の紹介」の先行事例20件のうち、9件において基本協定を締結することとしています。

Q5-5:直接協定(ダイレクトアグリーメント)とは何ですか。

Answer

直接協定とは、選定事業者による選定事業の実施が困難となった場合又はそのおそれがある場合などに、地方公共団体によるPFI事業契約の解除権行使を融資金融機関が一定期間留保することや、金融機関による担保権の設定・実行に関する取り決めなど、事業に対する一定の介入を可能とするために、地方公共団体と融資金融機関との間で直接結ばれる協定です。

公共サービスを継続的かつ安定的に供給する観点からは、地方公共団体にとっても意義のある協定です。

詳細については、総務省で公表している「PFI事業の課題に関する検討報告書~直接協定の典型例について~(平成16年7月)」が参考になります。この報告書では、直接協定において規定する内容として次を示しています。

第1条 事業契約及び融資契約の遵守
第2条 株式に対する担保の設定
第3条 事業契約に基づく金銭債権に対する担保の設定
第4条 施設等に対する担保の設定
第5条 保険金請求権に対する担保の設定
第6条 株式に対する担保権の実行
第7条 事業契約に基づく金銭債権に対する担保権の実行
第8条 施設等に対する担保権の実行
第9条 保険金請求権に対する担保権の実行
第10条 新たな事業契約の締結
第11条 新たな土地使用貸借契約の締結
第12条 金融機関団の通知等
第13条 地方公共団体の通知等
第14条 事業契約の解除
第15条 相互協議
第16条 金融機関団の継承人
第17条 有効期間
第18条 秘密保持

Q5-6:事業者の提案事項は、原則として履行させなければならないと思いますが、例外はありますか。例えば、借入する金融機関の変更も認められないのでしょうか。

Answer

地方公共団体は、原則として選定事業者に提案内容の履行を求める必要があります。ただし、提案書では、「○○を実施する」という内容と「○○の実施を計画している」という内容が混在していますので、審査に当たっては十分に見極める必要があります。もちろん、後者の「○○の実施を計画している」という内容であっても、未計画の応募者と比較した際に検討の熟度が高いと判断できる場合には、評価に相当することもあり得ます。

なお、金融機関の変更については、仮に融資関関心表明書が添付してあっても「融資を受けることを計画している金融機関」となっていることが多いと考えられますので、理由によっては、変更を認めることは可能と考えられます。

また、「○○を実施する」という提案であっても、やむを得ない理由で実施できなくなった場合は、協議を行い、設計変更、仕様変更などで対応せざるを得ません。必要に応じて、サービス対価の減額やペナルティを付与する場合もあります。

Q5-7:選定されなかった応募グループの構成員が落札者グループの協力者になることは可能ですか。

Answer

先行事例では、PFI事業に含まれる業務範囲の一部を実施するために必要なノウハウを有する企業が極めて限られているなど特殊な事情がない限り、構成員が複数のグループに参加することは認めていません。

ただし、事業者決定後に、協力者(構成員と異なり、必ずしも提案段階で企業名を明示する必要がない民間事業者や、事業者決定後に決めればよい民間事業者)としてSPCから事業の一部をゆだねることについては、認めている事例もあります。

Q5-8:通常の請負契約においては、工事費の10%程度の履行保証で契約保証金を免除していますが、維持管理、運営業務を契約に含むPFI事業ではどうでしょうか。

Answer

地方自治法第234条の2第1項に規定される契約の適正な履行の確保は、PFI事業でも必要です。ただし、PFI事業は長期契約が前提になることから、その金額は大きく期間も長くなり、民間事業者にとっては相当の負担になります。履行を確保するために、契約保証金を求める必要があるのであれば納付させることが妥当ですが、必ずしも契約保証金を求める必要がないにもかかわらず納付を求めると、VFMを阻害する要因にもなります。

PFI事業の場合、民間事業者は、維持管理、運営の段階で、初期投資を回収する必要があるため、建設工事終了後、民間事業者が契約上の義務を放棄する可能性は、ほとんど考えられません。

したがって、工事期間のみ契約保証金を預かることで、同等の履行確保は達成されると考えられます。各地方公共団体の規則との整合を図り、通常の工事契約同様、建設工事にかかる履行保証保険の付保で契約保証金を免除している事例が多くなっています。

「先行事例の紹介」のうち「多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業」や「新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業」、「桑名市図書館等複合公共施設特定事業」において、履行保証保険の付保等を条件に契約保証金の納付を免除する旨が規定されています。

Q5-9:どのようなものが不可抗力なのでしょうか。

Answer

「PFI事業におけるリスク分担等に関するガイドライン(平成13年1月22日内閣府PFI推進委員会)」によると、不可抗力とは、協定等の当事者の行為とは無関係に外部から生じる障害により通常必要と認められる注意や予防策を講じてもなお防止し得ないものと考えられます。

地方公共団体及び民間事業者のいずれの責めにも帰しがたい天災等、具体的には、暴風、豪雨、洪水、高潮、地滑り、落盤、地震、火災、有毒ガスの発生等自然災害に属するものと、騒乱、暴動、戦争、テロ行為等の人為災害に属するものとに分類できます。

ただし、要求水準書等で基準を定めたものにおいては、当該基準を超えるものに限ります。例えば、風速50メートル、水位10メートルまでは耐えられることを設計条件とする場合などです。

Q5-10:金利の確定リスクとは何ですか。

Answer

民間事業者にしてみれば、金利変動リスクは、金利を固定することで回避することができます。ただし、この金利は、融資実行の段階で確定するものです。したがって、提案書の提出段階で想定する調達金利との間には、乖離が生じる可能性があり、これが金利の確定リスクです。

このリスクを民間事業者が負担することとした場合、民間事業者は、提案書の提出段階では金利の想定値に余裕をみる可能性があり、その場合は契約金額に転嫁されることになります。また、一旦確定した金利を変更したり、融資を途中解約する場合、種々の金融費用が発生する可能性があります。

したがって、金利の確定リスクについては地方公共団体が負担し、地方公共団体が選定事業者に支払う金利相当の対価が確定する日を、事業契約締結日以降において別途に定める日(基準日)とし、かつ、その基準日を融資実行の日にできるだけ近づける方法も考えられます。

金利の確定リスクを民間事業が負担することとした場合

Q5-11:施設引渡時の登記を民間事業者に委託することは可能ですか。

Answer

「先行事例の紹介」のうち、「市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業」では、事業契約書において、民間事業者が市から委任され、建物表示登記及び保存登記を行うことが規定されています。

また、「PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業」では、同じく事業契約書において、建物の表示登記は民間事業者が自らの費用と責任で行い、保存登記は県が自ら判断して行い、民間事業者はそれに協力する義務を負うことが規定されています。

Q5-12:関係者協議の協議プロセスについて事前に規定していますか。

Answer

「先行事例の紹介」で得られた、関係者協議の協議プロセスの事前規定に関する情報を示します。

事業名 関係者協議会の協議プロセスの事前規定
多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(東京都)○(契約書案第77条)
四日市市立小中学校施設整備事業○(特定事業仮契約書(案)別紙16)
新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業(岡山県)なし
横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業なし
留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業○(事業契約書(案)第9条)
とがやま温泉施設整備事業(八鹿町)なし
山陽町新型ケアハウス整備事業なし
八雲村学校給食センター施設整備事業なし
「豊川宝飯衛生組合斎場会館(仮称)」整備運営事業○(事業契約書約款第6条)
(仮称)松森工場関連市民利用施設整備事業(仙台市)○(事業契約書(案)第79条)
PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業(山形県)○(事業契約書(案)第80条)
(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業○(施設の設計・建設及び維持管理並びに運営に関する契約書(案)第8条)
市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業なし
桑名市図書館等複合公共施設特定事業○(事業契約書(案)第1条)
鯖江駅周辺駐車場整備事業なし
八尾市立病院維持管理・運営事業○(事業契約書(案)第130条)
寒川浄水場排水処理施設更新等事業(神奈川県)○(特定事業契約書(案)第7条)
指宿地域交流施設整備等事業○(特定事業契約書(案)第89条)
福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業なし
橿原市近鉄八木駅前南地下駐車場等施設整備事業なし

Q5-13:関係者協議には誰が参加していますか。

Answer

関係者協議によって決定される範囲などにより、参加すべき関係者は異なるため、案件ごとに定める内容です。

一例としては、次が考えられます。

<地方公共団体>

  1. ○○部長の職にある者
  2. ○○課長の職にある者
  3. ○○担当の職にある者
  4. その他地方公共団体が指定する地方公共団体の職員その他の者

<選定事業者>

  1. 代表取締役の職にある者
  2. 取締役の職にある者(2名)
  3. その他選定事業者が指定する選定事業者の社員その他の者

場合によっては、融資金融機関がオブザーバーとして参加することもあります。

Q5-14:SPCが支払う不動産取得税や登録免許税などの公租公課相当分についても、消費税を支払わなければならないのでしょうか。

Answer

不動産取得税や登録免許税は、SPCの初期投資(会社設立を含む)にかかる税金です。これら初期投資への対価として、地方公共団体が支払う割賦料や賃借料には、その全額に対し消費税及び地方消費税がかかります。(ただし、原則として、割賦料は元本のみ課税。)

一般的な委託契約でも、その委託料には、消費税のかからない所得税相当分も含めた全額に対し、消費税及び地方消費税がかかることと同様です。

Q5-15:長期契約を締結する不安があります。しっかりと監視し、指導するにはどのような点に気をつけたらよいでしょうか。

Answer

まずは、地方公共団体と民間事業者の役割分担を事業契約書において明記しておくことが必要です。

また、地方公共団体が、モニタリングや指導を行うことを事業契約書に明記しておくことが大切です。

「先行事例の紹介」で得られた、維持管理運営段階においてSPCが地方公共団体に提出する書類に関する情報を示します。

事業名 提出する書類
多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(東京都)
  1. 運営業務
    • 年間運営業務計画書(1回/年)
    • 各種業務報告書(1回/月)
  2. 維持管理業務
    • 年間維持管理業務計画書(1回/年)
    • 各種業務報告書(1回/月)
  3. 社会教育事業
    • 事業報告書(1回/月)
  4. その他
    • 利用者モニタリング結果報告書(随時)

横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業
  1. 運営業務業務の実施状況報告
    • 日報
    • 月報
    • 施設の改修及び故障・補修報告書等
  2. 財務状況に関する書類
    • 年間維持管理業務計画書(1回/年)
    • 財務諸表等

(仮称)松森工場関連市民利用施設整備事業(仙台市)
  1. 運営業務計画書(1回/年)
  2. 維持管理業務計画書(1回/年)
  3. 修繕業務計画書(事業期間中1回)
  4. 業務報告書
    • 日報
    • 月報
    • 四半期総括書
  5. 利用者モニタリングの結果(1回/年)
  6. 財務書類(1回/年)
  7. 民間収益事業にかかる収支報告書(1回/年)

(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業
  1. 維持管理・運営業務計画書(事業期間中1回)
  2. 各種業務年間計画書(1回/年)
  3. 従事職員名簿(業務開始前及び異動時)
  4. 業務報告書
    • 日報
    • 月報
    • 上半期報告書
    • 年報
  5. 財務書類(1回/年)

Q5-16:行政財産とするBTO施設において、選定事業者が業務の実施に必要となる施設の使用権原はどのように考えたらよいでしょうか。

Answer

PFI法第12条の2第4項に規定されるように、地方公共団体が必要があると認めるときは、地方自治法の規定にかかわらず、選定事業の用に供するため、行政財産を選定事業者に貸し付けることができます。

また、特に貸し付けずに、委託業務の履行場所として、事業契約において当該施設を指定した上で使用させることも可能です。

参考: PFI関係法令

Q5-17:事業契約の締結に当たっては、まずSPCと仮契約書を締結し、議会に付議し、議決を得られた後に本契約書の締結になります。仮契約と本契約を締結しますが、調印回数は1回でしょうか、2回でしょうか。

Answer

PFIに限らず、地方自治法第96条第1項第5号に規定される契約については仮契約を行うこととなるため、当該地方公共団体が適用している従前の方法と同様の方法により調印することが前提となります。

なお、2回調印する場合において契約金額を明記する方法の場合は、ともに印紙税が発生することも踏まえて対応する必要があります。