IV.障害者を捉える設問に関する調査 IV-4-2 (1)

4.調査の結果

2)紙面調査

●サンプル:209名

●サンプルの属性

<性別>※当該設問における無回答1
 男性:135名(64.9%)、女性:73名(35.1%)

<年齢階層別>※当該設問における無回答1
 紙面調査については、12団体に協力を依頼して実施したが、期間が短かったこともあり、調査対象者の抽出に必要以上の負荷をかけていただかないよう、性別や年齢階層別については具体的な割付依頼は実施しなかった。実際の回収数・割合は我が国の国民の人口構成比とは必ずしも近い割合となっていない。

【実数】
合計 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80歳以上
合計 209 81 38 40 27 17 6 0
男性 135 54 22 22 16 15 6 0
女性 73 27 15 18 11 2 0 0
【割合】
合計 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80歳以上
合計 100.0% 38.8% 18.2% 19.1% 12.9% 8.1% 2.9% 0.0%
男性 64.6% 25.8% 10.5% 10.5% 7.7% 7.2% 2.9% 0.0%
女性 34.9% 12.9% 7.2% 8.6% 5.3% 1.0% 0.0% 0.0%

<公的障害者制度の利用状況との関係>

 紙面調査は、障害当事者についての回答が得られるような対象者の抽出を12団体に依頼し実施した。具体的には、「それぞれの団体に所属し、又は関係する障害当事者の方をご紹介いただいた上で、弊社より当該当事者の方に調査票を送付し、アンケート調査をお願いしたい」との依頼を行った。なお、「ご回答につきましては、障害当事者の方がご自分でご回答いただくことや、ご自分の意思を伝えることで同居のご家族や介助者等の周囲の方に代理で記入していただくことを原則としておりますが、これによりがたい場合は、同居のご家族の方が日常の生活状況等から判断してご記入(回答)いただくことも可能」とし、障害当事者本人の回答が難しい場合には、ご家族等による代理回答を依頼した。
 その結果、公的障害者制度の利用状況については、209名中201名が何らかの公的障害者制度を利用していると回答した。7名については公的障害者制度の利用状況については無回答であり、どのような公的障害者制度を利用しているのかが把握できていない。また、1名については「公的な障害者関連制度は利用していない」と回答した。

<公的障害者制度利用状況と他の制度の利用状況>

 以下は、公的障害者制度の利用状況について、複数回答(MA)で回答した結果を示す集計表である。例えば、「身体障害者手帳を所持している者」が他にどのような公的障害者制度を利用しているのかを横軸で見ることができる。

図表 131 公的障害者制度利用状況と他の制度の利用状況

【実数】
該当者数 Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。
1.身体障害者手帳を所持している 2.療育手帳を所持している 3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 5.障害年金を受給している  6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  8.介護保険法によるサービスを利用している 9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。 1.身体障害者手帳を所持している 118 22 0 1 89 42 5 6 11 26
2.療育手帳を所持している 83 22 10 4 45 28 12 3 5 11
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  12 0 10 1 8 2 4 0 1 1
4.精神障害者保健福祉手帳を所持して
いる
18 1 4 1 6 7 2 0 1 1
5.障害年金を受給している  121 89 45 8 6 47 13 5 11 23
6.障害者総合支援法に基づく自立支援
給付を受給している
63 42 28 2 7 47 8 1 8 16
7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けて
いる 
18 5 12 4 2 13 8 1 0 3
8.介護保険法によるサービスを利用
している
6 6 3 0 0 5 1 1 1 1
9.難病法に基づく指定難病の医療費
助成を利用している 
22 11 5 1 1 11 8 0 1 4
10.その他の公的な障害者関連制度・
機関 を利用している
33 26 11 1 1 23 16 3 1 4
11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
【割合】
該当者数 Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。
1.身体障害者手帳を所持している 2.療育手帳を所持している 3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 5.障害年金を受給している  6.障害者総合支援法に基づく自立支援給付を受給している 7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けている  8.介護保険法によるサービスを利用している 9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を利用している  10.その他の公的な障害者関連制度・機関 を利用している 11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない
Q15_あなたの公的な障害者関連制度・機関の利用状況について、お答えください。 1.身体障害者手帳を所持している 118 18.6% 0.0% 0.8% 75.4% 35.6% 4.2% 5.1% 9.3% 22.0%
2.療育手帳を所持している 83 26.5% 12.0% 4.8% 54.2% 33.7% 14.5% 3.6% 6.0% 13.3%
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の知的障害者判定機関による判定書を所持している  12 0.0% 83.3% 8.3% 66.7% 16.7% 33.3% 0.0% 8.3% 8.3%
4.精神障害者保健福祉手帳を所持して
いる
18 5.6% 22.2% 5.6% 33.3% 38.9% 11.1% 0.0% 5.6% 5.6%
5.障害年金を受給している  121 73.6% 37.2% 6.6% 5.0% 38.8% 10.7% 4.1% 9.1% 19.0%
6.障害者総合支援法に基づく自立支援
給付を受給している
63 66.7% 44.4% 3.2% 11.1% 74.6% 12.7% 1.6% 12.7% 25.4%
7.障害者職業センター又は障害者就業・生活支援センターによる支援を受けて
いる 
18 27.8% 66.7% 22.2% 11.1% 72.2% 44.4% 5.6% 0.0% 16.7%
8.介護保険法によるサービスを利用
している
6 100.0% 50.0% 0.0% 0.0% 83.3% 16.7% 16.7% 16.7% 16.7%
9.難病法に基づく指定難病の医療費
助成を利用している 
22 50.0% 22.7% 4.5% 4.5% 50.0% 36.4% 0.0% 4.5% 18.2%
10.その他の公的な障害者関連制度・
機関 を利用している
33 78.8% 33.3% 3.0% 3.0% 69.7% 48.5% 9.1% 3.0% 12.1%
11.上記の公的な障害者関連制度は利用していない

※公的障害者制度の利用状況について無回答の者はここでは集計に含んでいない。

(1)集計結果の妥当性の評価(捕捉率)

<1>3つの設問により障害者と捕捉された者の割合

 まず、回答結果の妥当性のための判断として、今回調査対象とした3つの設問(ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0)によると、どの程度の割合の者が、それぞれの設問において障害者として捕捉されたのかを分析した。
 なお、3つの設問(ワシントングループの設問、欧州統計局の設問、WHODAS2.0)における障害者の定義は、インターネット調査と同様としている。詳細は38ページ参照。

 本節における捕捉率とは、主要な公的障害者制度の利用者に占める各設問に基づく「障害のある者」の割合とする。

(代替性の観点)

●すでに公的障害者制度の利用者(紙面調査の回答者)については、今回の3つの設問における捕捉率はいずれの設問も40~60%程度の間にとどまっており、新たな設問で「障害のある者」を捕捉する場合には、一定数の者が、公的障害者制度を利用しているにもかかわらず、「障害のある者」として捕捉されないことになる。
●公的障害者制度の利用者については、新たな設問では機能面に着目していることから機能的な意味での障害が少ない可能性や、新たな設問の内容(例:健康問題の存在とその一定期間の継続)により捕捉されなかった可能性、さらには、公的障害者制度によって適切な支援が行われているために支障等が緩和されているため「障害のある者」と捉えられなかったこと等が可能性として考えられる。

  • ワシントングループの設問においては、「障害のある者」として捕捉された者は59.2%となった。
  • 欧州統計局の設問においては、「障害のある者」として捕捉された者の割合は43.3%となった。「健康問題」があることと、日常生活への支障、その継続が定義とされているので、「健康問題がない」と考える回答者が多いことが影響していると考えられる。

※以下の図表における有効回答数の考え方は以下である。

 ワシントングループの設問:
 6つの設問にすべて回答した者、6つの設問にすべて回答したわけではないものの回答した設問において「障害がある」と捕捉された者。

 欧州統計局の設問:
 「障害がある」と捕捉するための2つの設問に全て回答している者。

 WHODAS2.0
 12の質問に対して一部でも回答した結果、スコアが基準値(14.5)を超えた者。

図表 132 各設問により「障害のある者」として捕捉された割合

図表 132 各設問により「障害のある者」として捕捉された割合
ワシントン
グループ
欧州統計局 WHODAS2.0
N数 209 209 209
有効回答数 201 203 203
障害のある者の数 119 88 102
障害のある者 59.2% 43.3% 50.2%
障害のない者 40.8% 56.7% 49.8%
<2>公的障害者制度の利用内容ごとの捕捉率

 個別の公的障害者制度の利用者ごとに、3つの設問で把握された「障害のある者」の捕捉率について集計を行った。
 なお、本節における捕捉率とは、個別の公的障害者制度の利用者に占める各設問に基づく「障害のある者」の割合とする。
 なお、WHODAS2.0では、そもそも「障害のある者」の定義は存在しないので、ここでは詳細には言及してない。

●公的障害者制度により、ワシントングループの設問、欧州統計局の設問の「障害のある者」の捕捉率には差が見られる。これは、既述のように、新たな設問では捉えにくい公的障害者制度の利用者がいることや、既存の公的障害者制度を利用することで日常的・機能的な支障を認識せずに済んでいること、さらには、障害や支障が継続することで慣れてしまい、客観的には支障があるのに本人が支障を認識していない等の理由で「障害のある者」として捕捉されにくくなっていることも理由と考えられる。
●したがって、新たな設問では捕捉率が低い公的障害者制度があることは問題ではなく、制度が機能しているからこそ低い捕捉率になっているとも考えられるし、新たな設問の設問内容の見直しを通じて捕捉率を高めることも検討可能である(例:ワシントングループの設問に精神障害に係る設問の導入を検討する等)。

(設問ごとの結果)

  • ワシントングループの設問では、身体障害者手帳を所持している者の捕捉率が83.9%、療育手帳を所持している者の捕捉率が39.8%、障害年金を受給している者の捕捉率が75.2%、自立支援給付を受給している者の捕捉率が71.4%となった。
  • 欧州統計局の設問では、身体障害者手帳を所持している者の捕捉率が54.2%、療育手帳を所持している者の捕捉率が28.9%、障害年金を受給している者の捕捉率が52.9%、自立支援給付を受給している者の捕捉率が66.7%となった。

(設問間の比較)

  • 身体障害者手帳を所持している者については、ワシントングループの設問の捕捉率が最も高く83.9%である。ワシントングループの設問では具体的な身体障害と結びつきやすい設問(見えにくい、聴き取りにくい等)が含まれていることが理由と考えられる。逆に、欧州統計局の設問の捕捉率は54.2%と低く、これは、慢性疾患や健康問題についての設問であることから身体障害があっても健康上の問題を感じていない者は捕捉されないことが理由と考えられる。
  • 療育手帳を所持している者については、欧州統計局の設問の捕捉率は28.9%と低く、やはり、慢性疾患や健康問題についての設問であることから知的障害があっても健康上の問題を感じていない者は捕捉されないことが理由と考えられる。
  • 障害年金を受給している者については、ワシントングループの設問の捕捉率が最も高く75.2%である。欧州統計局の設問が52.9%と相対的に低くなっている。
  • 自立支援給付を受給している者についてはワシントングループの設問も捕捉率が相対的に高く71.4%となった。

※以下の図表における有効回答数は、それぞれの設問において「障害がある者」と捕捉された者の数である。

図表 133 公的障害者制度の利用状況と各設問により「障害のある者」として捕捉された者(実数)
(公的障害者制度の利用状況は複数回答)
本調査で出現
した当該公的
障害者制度の
利用者数
ワシントン
グループ
欧州統計局 WHODAS2.0
N数 201 201 203 203
『障害のある者』 119 88 102
1.身体障害者手帳を所持している 118 99 64 74
2.療育手帳を所持している 83 33 24 34
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の
知的障害者判定機関による判定書を所持
している 
12 2 2 2
4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 18 4 10 7
5.障害年金を受給している  121 91 64 76
6.障害者総合支援法に基づく自立支援
給付を受給している
63 45 42 42
7.障害者職業センター又は障害者就業・
生活支援センターによる支援を受けている 
18 5 7 7
8.介護保険法によるサービスを利用している 6 6 5 5
9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を
利用している 
22 11 17 14
10.その他の公的な障害者関連制度・
機関 を利用している
33 28 24 25
図表 134 公的障害者制度の利用状況と各設問により「障害のある者」として捕捉された者(割合)
(公的障害者制度の利用状況は複数回答)
本調査で出現
した当該公的
障害者制度の
利用者数
ワシントン
グループ
欧州統計局 WHODAS2.0
N数 201 201 203 203
『障害のある者』 119 88 102
1.身体障害者手帳を所持している 100.0% 83.9%** 54.2% 62.7%*
2.療育手帳を所持している 100.0% 39.8% 28.9% 41.0%
3.児童相談所、知的障害者更生相談所等の
知的障害者判定機関による判定書を所持
している 
100.0% 16.7% 16.7% 16.7%
4.精神障害者保健福祉手帳を所持している 100.0% 22.2% 55.6% 38.9%
5.障害年金を受給している  100.0% 75.2%** 52.9% 62.8%*
6.障害者総合支援法に基づく自立支援
給付を受給している
100.0% 71.4%** 66.7%* 66.7%*
7.障害者職業センター又は障害者就業・
生活支援センターによる支援を受けている 
100.0% 27.8% 38.9% 38.9%
8.介護保険法によるサービスを利用している 100.0% 100.0%** 83.3%** 83.3%**
9.難病法に基づく指定難病の医療費助成を
利用している 
100.0% 50.0% 77.3%** 63.6%*
10.その他の公的な障害者関連制度・
機関 を利用している
100.0% 84.8%** 72.7%** 75.8%**

※検討の一つの手がかりとして、60%以上の捕捉率がある場合にセルを淡い強調(*)、及び70%以上の捕捉率がある場合にセルを強調(**)と、段階的に示している。ただし、捕捉率が高いことは代替性の観点からは評価できるが、補完性等の観点からは多様な評価ができることに留意が必要である。

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