ステップ1 事業の発案

参考のリンクについては、ホームページまたはPDFへリンクしています。

本ステップで地方公共団体が実施すること

1. PFI事業の実施検討

公共事業として実施する事業について、PFIの導入可能性について検討します。検討においては、金融、法務、技術等の専門知識やノウハウが必要になるため、コンサルタント等を活用することもあります。

2. PFI導入の庁内合意形成

PFIは、従来と異なる新たな事業手法であることから、その取組に当たっては、庁内において必要な説明を行い、合意を得る必要があります。

3. 民間事業者からの事業発案受付

民間事業者から、PFIの導入について発案を受ける可能性があります。発案があった場合、適切な対応を講じる必要があります。

Q1-1:PFIを導入する際の発意者やきっかけはどういったものがありますか。

Answer

「先行事例の紹介」で得られた、PFIの導入契機に関する情報を示します。

事業名 発意者 きっかけ
四日市市立小中学校施設整備事業 教育委員会
新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業(岡山県) 有識者による会議 有識者による会議(おかやま21世紀戦略会議)のテーマとしてPFIについて議論
横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業 下水道局局長 下水道経営の改善
留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業 協議会事務局員 協議会事務局員が北海道大学教授による講義を受講
とがやま温泉施設整備事業(八鹿町) 企画商工課 内閣府によるPFI導入のPRパンフレットを受領
山陽町新型ケアハウス整備事業 町長 有識者からPFI手法の紹介を受ける
八雲村学校給食センター施設整備事業 村長
「豊川宝飯衛生組合斎場会館(仮称)」整備運営事業 組合管理者
(仮称)松森工場関連市民利用施設整備事業(仙台市) 施設課
PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業(山形県) 住宅課
(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業 前市長(PFI方針発意)
市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業 第七中学校建設検討委員会
桑名市図書館等複合公共施設特定事業 市長 市民ニーズである図書館建設に対応するため、事業手法を含めた中で、PFIの情報を収受し研究
鯖江駅周辺駐車場整備事業 市長
八尾市立病院維持管理・運営事業 市特別職
寒川浄水場排水処理施設更新等事業 企業庁
指宿地域交流施設整備等事業 市長

Q1-2:庁内でPFIについての勉強会を開きたいのですが、どのように講師を依頼すればよいのでしょうか。

Answer

財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団)で、PFIアドバイザーの派遣を実施しています。具体的には、地方公共団体の要請に応じ、シンクタンク等の専門家やふるさと財団のPFI担当職員をアドバイザーや研修講師として派遣し、必要な助言・指導、研修を行っているものです。なお、講師費用はふるさと財団の負担です。
この他、コンサルタント等に、直接依頼することも考えられます。

Q1-3:PFI事業を推進するに当たって、専属の組織や職員を置いていない事例はありますか。

Answer

本手引きの作成に当たって実施したアンケート調査の結果(「印刷用ファイル」メニューの参考資料に掲載)によると、PFI事業の実績がない地方公共団体の多く(52.9%)は、庁内の組織・体制等が整備されていません。ただし、実績がある地方公共団体であっても、専属組織を配置することは少なく、対象施設の所轄部署のみで実施するケースが多いようです。

実施体制については、補助職員の配置人数やコンサルタント等への委託業務量によって異なりますが、「先行事例の紹介」のうち、「留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業」、「(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業」、「鯖江駅周辺駐車場整備事業」、「指宿地域交流施設整備等事業」、「福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業」では、専属の職員を配置せずに実施しています。

Q1-4:PFI事業を実施することで、地方公共団体には、どのような業務が増えるのでしょうか。

Answer

先行事例においては、PFIを導入することで、主に次のような業務が増えたようです。
一方、PFIを導入することで、設計、施工監理、リスク対応、毎年の委託業者選定(及び契約)などの業務は軽減しているようです。

業務の分類 増大業務の具体的内容
庁内調整関連
  • 事業スキームの確定(業務範囲、期間など)
  • 需要予測
  • 長期債務負担行為の設定
財務・金融関連
  • 財務シミュレーション
  • 現在価値換算
  • 事業性評価(特定事業選定及び提案書評価)
法務関連
  • 契約書案の作成
  • 契約書の協議
  • 基本協定、直接協定に関連する検討
その他
  • 審査委員会の運営
  • 応募者からの質問への回答

Q1-5:弁護士への業務委託は必要ですか。また、弁護士はどのような業務を担当していますか。

Answer

地方公共団体と民間事業者の役割分担を明確にするPFI事業では、契約書が重要になります。契約書の内容は事業ごとに異なること等から、先行事例の多くでは、弁護士が関与しています。

弁護士の関与方法については、地方公共団体が直接委託を行う場合もありますが、コンサルタント等との契約に含めて、間接的に協力を受ける場合が多いようです。

弁護士が実施する業務の一例を示します。

  1. 事業スキームの検討時における各種の法的チェックとアドバイス
  2. 契約書案の作成
  3. 応募者からの質問・意見への対応
  4. PFI事業契約等協議の支援

Q1-6:コンサルタント等はどのタイミングで導入していますか。

Answer

「先行事例の紹介」の事例のうち、ほとんどの案件では、PFI導入可能性調査の実施段階からコンサルタント等を導入しています。また、導入可能性調査とは別に、PFI導入決定後のアドバイザリー業務にもほとんどの案件でコンサルタント等を導入しています。

Q1-7:コンサルタント等を活用すると費用はどの程度になるのですか。

Answer

委託の範囲や内容により費用は異なります。
したがって、あくまでも参考ですが、具体的な費用は、導入可能性調査については、業務範囲に施設計画を含まない場合で、500万円~1,000万円程度(先行事例による)のようです。

事業者選定アドバイザリー業務については、規模等にもよりますが、実施方針の策定からPFI事業契約の締結までで2,000万円~5,000万円程度(先行事例による)のようです。

モニタリング支援業務については、PFI事業の業務内容や支援の範囲によりますが、設計・建設期間で年間600万円~1,000万円程度(先行事例による)、運営期間で年間200万円~700万円程度(先行事例による)のようです。

なお、見積依頼や簡単な相談については、特に費用はかからないことが多いようです。

Q1-8:導入可能性調査を実施する前の段階で、庁内で簡易にVFMを確認する際に参考になるものはありますか。

Answer

VFMを算定するシミュレーションに用いるデータの一例を次に示します。

地方公共団体が提示するデータ 一般的に地方公共団体とアドバイザーが 相談しながら決めるデータ
1. PFI事業に係わるもの -
  • 設計・建設期間
  • 維持管理運営期間
  • 事業方式
2. 初期投資費用 -
  • 類似施設の建設データ
  • 開業準備費・各種調査費・設計費・建物建設費
  • 工事費監理費・外構整備費
  • その他整備費
3. 維持管理費 -
  • 類似施設の維持管理データ
  • 維持管理費
4. 運営費 -
  • 類似施設の光熱水費
  • 既存施設の職員の人数、人件費単価、職種等
  • 運営費(需要予測等も含む)
5. その他の費用 - アドバイザー費・モニタリング費等
6. 資金調達に係わるもの 【従来方式】
  • 一般財源充当率(起債充当率)
  • 返済年数・据置期間
  • 借入金返済方法(元金均等/元利均等)
【PFI】
  • 借入金返済方法(元金均等/元利均等
【PFI】
  • 自己資本比率(借入金充当率)
  • 割賦金利・銀行借入金利
  • 返済年数・金利の見直し(○年ごと)
  • LIBOR(TIBOR)
  • 銀行スプレッド
  • 事業者スプレッド
  • EIRR条件(○%以上)
  • DSCR条件(○以上)
7. その他 -
  • 割引率
  • インフレ率
  • 公租公課
  • PFIの場合の事業費削減率

国土交通省では、「国土交通省所管事業を対象としたVFM(バリュー・フォー・マネー)簡易シミュレーション」及び「同第2次検討」をホームページに公開していますので、参考にしてください。

また、新潟県では、PFI事業を導入する上での基本的考え方、手続方法、留意事項等をとりまとめた、PFI活用指針(手引書)を策定しています。あわせて、「VFM算定シート」をホームページに公開していますので、参考にしてください。

Q1-9:どのような事業分野がPFI事業に向いているのでしょうか。

Answer

神奈川県で作成、公表している「神奈川県におけるPFIの活用指針」では、次の要素のいくつかに該当する事業がPFI事業に向いているとしています。

  1. プロジェクトの領域が明確なもの(道路、鉄道、庁舎など)
  2. 運営収入が見込める事業であるもの(鉄道、水道、駐車場など)
  3. 業績(アウトプット)の計測が容易なもの(鉄道、水道など)
  4. 建設段階よりも運営段階の比重が高いもの(文化会館、廃棄物処理施設など)
  5. 設計段階から民間事業者の創意工夫が可能なもの(庁舎、公営住宅、教育文化施設など)
  6. 民間事業者が資産を取得した場合、他の用途に転用可能なもの(宿舎、公営住宅などPFI事業以外へ転用可能なもの)
  7. 民間事業者が実施に当たり、適切にリスクをコントロール可能なもの(文化会館、観光施設など商業ベースで対応が可能なもの)
  8. 事業環境の変動が激しいもの(文化施設など運営面の比重が高く利用者のニーズの変動要素が高いもの)
  9. 県が直接実施した場合に、財政上の負担が大きいもの(鉄道などのように事業規模が大きいもの)

また、福岡市で作成、公表している「福岡市PFIガイドライン第2版」では、次の評価基準により検討することとしています。(あくまでも総合的な適性を判断するための判断要素としています。)

分類 評価基準
基本適性
  • 資産形成の有無
  • サービス水準の明確性
  • 民間の創意工夫の余地
  • 競争性の確保
  • 民間の運営や維持管理部分の割合
  • 事業方式検討の時間的余裕
  • 公共サービスの必要性の長期見通し
  • 適切な事業規模
  • 事業破綻による影響
  • 利害調整の存在
  • 性能発注の適合性
  • 適切なモニタリングの可能性(安全性に対する課題の有無)
  • 民間へのリスク移転の効率性
熟度
  • 事業内容、要求水準、事業主体の明確性
  • 建設場所の特定
  • スケジュールの明確性
  • 適切な予算化のタイミング
制度的障害の有無・程度
  • 事業主体等の制約
  • 補助金・起債上の制約
  • 公権力行使の必要性
  • 現状要因に基づく困難性(社会的問題の有無等)
  • 個人情報に関する制限の有無
検討の優位性
  • 財政運営への影響
  • 相乗効果
  • 公共サービスの質向上の可能性
  • スケールメリット

Q1-10:PFI事業に係る支援措置等には、どういったものがありますか。

Answer

次のような支援措置等があります。

  1. 補助制度
    • 民間資金等活用事業調査費補助金(内閣府)
      - 地方公共団体におけるPFI事業の具体化を支援(平成17年度にて終了)
    • 国庫補助金を活用して地方公共団体がPFI事業を実施する場合には、従来手法とPFIとのイコールフッティングを図る観点から、地方公共団体におけるPFI事業の円滑な実施が図られるよう、現在、関係省庁において要綱等の見直しを実施中(Q2-22参照)
  2. 無利子融資
    • 日本政策投資銀行、民間都市開発推進機構、港湾整備特別会計等からの無利子融資
  3. 財政投融資
    • 日本政策投資銀行を通じた低利融資制度 等
  4. 税制
    • 不動産取得税、固定資産税及び都市計画税の減免措置(Q3-5参照) - 港湾荷さばき施設、一般廃棄物処理施設、国立大学法人の校舎 - 公共代替性が強く、民間競合のおそれのない施設
  5. 国公有財産の使用
    • PFI事業者に対し、行政財産の貸付けを行うことが可能
    • PFI事業者と民間収益施設等との合築を行う場合、一定の条件のもとPFI事業者に対し、行政財産である土地の貸付けを行うことが可能
    • 国有財産、公有財産を無償又は時価より低い対価でPFI事業者に使用させることが可能

Q1-11:先行事例では、具体的にどのような民間のノウハウが発揮されて、コストが削減されているのでしょうか。

Answer

「先行事例の紹介」で得られた、具体的な民間事業者からの提案内容とその効果を示します。PFI事業では、このような工夫が行われることによりコストが削減されているようです。

事業名 導入された民間のノウハウ 効果
留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業 法面安定工や覆土工に新工法を採用し、土工を低減 建設費の縮減
山陽町新型ケアハウス整備事業 既存福祉センターの解体工事を新施設建設工事の一部として実施 建設費の縮減
(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業 建設工事期間の短縮 建設費の縮減
市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業 合築による一体整備(当初は分棟を想定) 建設費の縮減
八尾市立病院維持管理・運営事業 業務の重複削減や隙間業務の実施、職員シフトの効率化 人件費の縮減
寒川浄水場排水処理施設更新等事業(神奈川県) 脱水ケーキの再生利用に関する市場対応力 産業廃棄物の処分費の削減

Q1-12:PFIを導入するメリットの一つに財政支出の平準化があると思います。これは、結果的には達成されているのでしょうか。

Answer

国庫補助金が交付される事業においては、制度上、地方公共団体も相当額を一括で拠出する必要がある場合もありますが、これらを除き、多くのPFI事業で財政支出の平準化が達成されています。物価や需要等一部の変動要素は残るものの概ね平準化されています。

「先行事例の紹介」の「PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業」では、補助金交付に伴う県負担分も平準化しています。この県負担分は、従来では一括拠出することになりますが、関係省庁との協議を経て、PFI事業では、この部分も含めて民間事業者が資金調達し、「割賦払」の形で平準化して支払うこととしています。

Q1-13:PFIを導入することでどのようなリスクが想定されますか。それらをどのように回避すればよいでしょうか。

Answer

地方公共団体にとっては、公共サービスの質が低下したり、継続できなくなることが、最大のリスクとして想定されますが、PFIを導入することにより、必ずしもこれらのリスクの顕在化の可能性が増すわけではありません。

PFI事業は、民間事業者自らが資金調達を行い、契約を遵守しながら維持管理、運営を行い、地方公共団体から払われるサービス対価により借入金を返済していく仕組みになっており、民間事業者が簡単に事業を放棄できるものではないためです。

したがって、事業の継続性を視野に入れた事業契約スキームの策定(地方公共団体と融資金融機関との間で締結する直接協定Q5-5参照)を含む)が重要になります。

「先行事例の紹介」の「福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業」のように、施設の供用開始後、SPCの経営が悪化したことにより、事業が中断に至った事例があります。しかし、この事例においても、施設は既に整備されているとともに、維持管理、運営を行う新たな民間事業者を確保できたため、結果的にはサービス提供の中断を最小限に抑えることができています。

また、全ての先行事例において、地方公共団体はモニタリングにより、民間事業者が実施する事業を監視しており、サービスの質の低下等を事前に防いでいます。さらに、PFIでは、民間事業者に融資する金融機関も、適正に事業が遂行されているか監視する役割を担っています。

Q1-14:PFIの他にも多様な民間活力を用いた手法がありますが、この中から最適な事業手法を決定する基準はありますか。

Answer

対象施設の分野、民間事業者にゆだねられる範囲、補助金の交付要件など個々の案件の特性を踏まえて検討する必要があります。

福岡市で作成、公表している「福岡市PFIガイドライン第2版」では、最適な事業手法の選定に当たっては、PFIの検討プロセスを活用することとしています。PFIの検討プロセスに含まれる多くの検討要素を活用することで、PFI以外の手法の導入可能性も検討することになります。

具体的には、PFIで採用されている「性能発注」「包括委託」「長期契約」などの要素を従来の直営方式に部分的に採用することが可能な場合、直営方式に導入し、民間活力を用いていくこととなります。PFIの検討プロセスを用いることにより、PFIの採用に至らなくても、その他の多様な民間活力を用いた手法を採用することにつながり、効果的な事業実施を実現することが可能になります。

また、同ガイドラインでは、最適な事業方式を検討する際の留意点として次を挙げています。

  1. 予定した結論を導く理由づくりからの脱却
  2. 制度面の変更時を見据えた段階的対応
  3. 官民の得意分野を出し合った協働
  4. 施設目標を明確にした上での事業方式の選定
  5. ライフサイクルを踏まえた事業実施の判断

Q1-15:PFIを導入するに当たり、最低限の規模はどの程度でしょうか。

Answer

PFI事業では、提案書作成費用、SPC設立費用、金融機関に支払う手数料など事業規模に関係なく、民間事業者に発生する費用もあります。VFMを達成するには、民間事業者は各種の工夫によるコスト削減(建設費や維持管理運営費)によって、これらの費用を補わなければなりませんが、事業規模が小さい場合は困難な場合もあります。以上のことから、建設費や維持管理運営費において、ある程度の規模が必要と考えられます。先行事例でも、事業規模として多いのは10億円以上50億円未満のものです。

一方、本手引きの作成に当たって実施したアンケート調査の結果((「印刷用ファイル」メニューの参考資料に掲載))によると、PFI事業の実績がない地方公共団体の多く(58.5%)では、PFIを導入する規模の事業予定がない又は少ないと考えられてますが、比較的小規模の事業においてもPFI事業が円滑に実施されている例もあります。以下に「先行事例の紹介」で得られた情報を示します。

事業名 事業類型 施設規模
PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業(山形県)サービス購入型5.0億円(建設費相当分)
横浜市下水道局改良土プラント増設・運営事業ミックス型(改良土料金収入+国庫補助金)4.1億円
指宿地域交流施設整備等事業ミックス型(サービス対価+独立採算)2.1億円
とがやま温泉施設整備事業(八鹿町)ミックス型(サービス対価+利用料金収入)1.2億円
鯖江駅周辺駐車場整備事業独立採算型0.7億円

Q1-16:当初、従来方式での実施を想定していて実施設計が完了している事業にPFIを導入した事例はありますか。

Answer

「神奈川県衛生研究所特定事業」、「調布市立調和小学校整備並びに維持管理及び運営事業」、「千葉市少年自然の家(仮称)整備事業」、「神奈川県立近代美術館新館(仮称)等特定事業」等では、地方公共団体が行った実施設計に基づき、選定事業者が施設を整備することとしています。これらの事例においては、実施設計の内容に対するVEバリュー・エンジニアリング)提案を求め、民間事業者の創意工夫を活用できることとしています。

Q1-17:PFIを導入して整備する施設について、利用者の意見を反映したいのですが、どのような方策がありますか。

Answer

地域住民等が利用する施設においては、利用者の声を事業内容に反映する必要があります。特に、従来の公共事業方式で実施する場合に利用者等の意見に配慮する計画においては、PFI事業であっても同様の手法を採用しないと、供用開始後に、利用者等からサービス水準の疑義が生じる可能性があります。

方策としては、利用者等の声を要求水準書に盛り込み、民間事業者にそれに基づいた事業を実施させることが考えられます。そのためには、地方公共団体は、事前に地域住民や利用者によるワーキンググループを設置したり、パブリックコメントを募集する必要があります。また、提案事項として、民間事業者が利用者の意見を集め、設計の際に計画に反映することも考えられます。

Q1-18:改修事業や、維持管理・運営のみの事業において、PFIを活用することはできますか。

Answer

改修事業においてもPFI手法は活用されています。「先行事例の紹介」のうち「多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業」では、民間事業者が行う業務範囲として、施設の改修、維持管理、運営を求めています。また、「八尾市立病院維持管理・運営事業」では、市は民間事業者に病院の一部設備や備品等の調達を求めています。

PFI事業は新設のみならず改修についても、民間事業者が資金調達を行います。維持管理・運営に重きを置くもの、既存施設を整備活用するもの、施設に付随する機材等の整備など維持管理・運営のみを行う事業についてもVFMが出ればPFI事業に該当します。

ただし、改修事業においては、設計図書が残っていない場合や施設に瑕疵がある場合もあり、元施工業者など特定の業者のみが有利にならないよう配慮が必要です。例えば、民間事業者の募集に際して地方公共団体が提供する資料や情報から合理的に推測できないような施設の瑕疵担保責任については、地方公共団体がリスクを負担することを明確にすることにより、民間事業者は瑕疵がないことを前提に提案を行えることとなるような工夫が考えられます。

Q1-19:民間事業者からの発案に基づく事業においては、当該発案者に有利となる面が存在することは問題ないのでしょうか。

Answer

著しく当該発案者に有利となるものは、基本方針(民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針(平成12年3月13日総理府告示第11号))に示される公平性原則に反していると考えられます。ただし、民間事業者からの発案である以上、当該発案者が関連する情報を早期に入手し、早期から検討開始できるメリットについては排除できません。したがって、発案者が有している関連情報のうち、ノウハウにかかる内容以外は全て公表するほか、提案書作成に要する期間についても十分に確保しなければ、平等な競争環境が構築されていないことになります。

なお、民間事業者からの発案を積極的に受け入れるために、発案した事実をもって、提案審査において評価することも考えられますが、公平性原則の観点から発案の公共性、ニーズ、優先順位等を評価してPFI事業として実施することが適当かどうかについて慎重に検討する必要があります。

Q1-20:地域の企業がPFI事業に参画するための効果的な手法はありますか。

Answer

基本方針(平成12年3月13日総理府告示第11号)に示されているとおり、民間事業者の選定においては公平性を担保することが必要です。なお、先行事例では、地域の企業をグループ構成員協力企業とすることは、応募者の判断にゆだねる一方、これらの提案を評価できる審査項目を設定している事例もあります。

事業名 事業類型 施設規模
四日市市立小中学校施設整備事業 基本的な考え方(地域活性化への配慮等) 配点:10点
満点:100点
総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業 維持管理業務に関する事項(植栽・外構維持管理業務) 配点:1点
満点:100点
PFIによる県営住宅鈴川団地移転建替等事業(山形県) 提案全体に関する事項(本県の今後のPFI普及のために、入札参加者のグループ構成等に配慮しているか) 配点:5点(注)
満点:100点
指宿地域交流施設整備等事業 事業全体に関する提案(地域貢献に関する事項) 配点:5点
満点:100点

(注) 「提案全体に関する事項」に係る配点割合を記載(各審査項目間の相乗効果や提案全体の斬新さ等に関する配点が含まれている)。

Q1-21:PFI事業者を指定管理者とする場合、事前にどのような措置が必要になりますか。

Answer

公の施設の管理における留意事項は「地方自治法の一部を改正する法律の公布について(平成15年7月17日総行行第87号)」に示されており、これを踏まえ、PFI事業者を指定管理者とする場合の留意事項を次ページに整理しました。

項目 留意事項
民間事業者が行う業務内容の検討 以下を指定管理者が行うことはできません。
  • 使用料の強制徴収
  • 不服申立てに対する決定
  • 行政財産の目的外使用許可
民間事業者を指定管理者に指定する際の議決 民間事業者の公募資料において、以下を明記しておく必要があります。
  • 指定にあたっては議決が必要となること
  • 議決の対象は、施設名称、SPC名、指定期間等であること
  • 議決が得られない場合の措置
条例の制定 条例に規定される以下の事項については、民間事業者の公募資料に具体的に明記し、確実に遵守されることを確保する必要があります。
  • 管理の基準(基本的な条件、個人情報の取扱いなど)
  • 業務の範囲(対象業務、使用許可権限を含むかなど)
  • 利用料金(料金設定方法、指定管理者の直接収受など)
事業報告書 民間事業者は、以下が記載された事業報告書を提出する必要があります。
  • 管理業務の実施状況や利用状況
  • 料金収入の実績
  • 管理経費等の実績

また、PFI事業と指定管理者制度の双方において、必要な議決があり、これらについて、総務省が「PFIと指定管理者制度について(平成16年12月15日)」として整理しています。

PFIと指定管理者制度について

PFIと指定管理者それぞれで必要な議決項目

PFIと指定管理者それぞれで必要な議決項目

基本的考え方

PFI法上の契約と指定管理者制度とは、基本的には別個の制度であり、一方の手続きが「自動的」に他方の手続きを兼ねるということはできない。
しかし、指定管理者は、公の施設の設置及びその管理に関する事項を定めた条例が制定された後に、当該条例において定められた手続きに則って選定されるものであり、指定管理者を選定する手続きについては、全ての条例に委ねられていることから、議会や住民に説明がつくのであれば、公募等の方法によって指定管理者を選定することは必ずしも必要とされず、PFI事業者が指定管理者となることができるよう条例で規定することも可能である。
また、公の施設の設置及びその管理に関する事項を定める条例は、その対象となる公の施設の目的や施設の状況が明らかになれば定めることが出来るものであり、PFI契約に係る議決を行う議会と同じ議会において設置管理に関する条例を定めることも排除されない。(当該条例に規定する指定管理者を選定する手続きの方法によるが、同じ議会において指定管理者の指定の議決を行うことも可能。)

考え得る議決のスケジュール

考え得る議決のスケジュール

具体例

事業名 PFI事業運営期間 指定管理者指定期間 備考
鯖江市地域交流センター・特定公共賃貸住宅整備等PFI事業 20年 20年 議決済
愛知県森林公園ゴルフ場施設整備等事業 20年 20年 16年度内に議決
長野市温湯地区温泉利用施設整備・運営PFI事業 15年 15年 16年度内に議決
(仮称)浜松市新清掃工場・新水泳場整備運営事業 15年 15年 17年度当初議決予定

(出典:「PFIと指定管理者制度について(平成16年12月15日総務省)」)